トランプ大統領は大阪G20後の韓国訪問時、金正恩・北朝鮮労働党委員長と、軍事境界線の板門店で会談した。中国共産党の強い影響下にある北朝鮮が米国との関係を築くことで、中国共産党の支配から離れて決定を下す機会が生まれている可能性がある。
トランプ大統領は6月30日、金委員長に会う前に、京畿道にある米空軍基地を訪問した。
大統領は空軍基地で「北朝鮮のための問題解決案を描いたのち、信じられないほどの繁栄のビジョンを導くだろう」と語った。
大統領は、北朝鮮が核兵器を完全に放棄することに合意すれば、米国はベトナムをモデルにした米朝関係を築くことができ、北朝鮮の経済発展が期待されると、繰り返し述べてきた。
同日午後、トランプ大統領は南北軍事境界線(DMZ)で金委員長と面会した。ホワイトハウスの発表した動画によると、金委員長は「(南北)国境を越える初の米大統領だ」と話し、大統領は入域した。両者は板門店で1時間会談した。
会談後、記者団の取材に答えたトランプ大統領は、今後数週間で双方の非核化交渉に向けた代表団を派遣することで合意したと述べた。
このわずか10日前、中国の習近平国家主席は6月20日から21日に北朝鮮を訪問し、金委員長と会談した。中国の主席が訪朝したのは14年振り。
米国と北朝鮮との非核化交渉において、長らく金政権の「兄貴」とみなされてきた中国共産党政権は、仲介役を果たしてきた。ハノイにおける第二回米朝首脳会談では、交渉が決裂している。在外中国語メディアは、習主席の訪朝で中朝関係を強調し、米国との貿易交渉において「北朝鮮カード」を出そうとしたのではないかと報じた。
しかし、現在、トランプ大統領は金委員長にツイッターでの直接的な呼びかけで、対北朝鮮交渉で中国よりもイニシアチブ(主導権)を取り、中国側の戦略を破綻させた模様だ。大統領は大阪G20期間中に開いた記者会見で、ツイッター投稿の後、北朝鮮側からすぐさま電話が来たと明かした。
米セントラル・オクラホマ大学の国際関係専門家・李小兵氏は、ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して「トランプ氏の外交は、これまでの辺縁関係や多国間外交の慣例を破り、第三者の干渉、関わりが難しくなった」と分析している。李氏は、米中関係もまた、トランプ政権により環境の阻害要因が突破され、より明白になり、突発性も帯びてきたという。
米セント・トーマス大学の国際研究センター・叶耀元教授は、トランプ大統領の北朝鮮政策は、これまでの米中朝の三国間関係を変えたと見ている。叶教授は「中国共産党は後退し、米国の立場が上昇している。米国はまた中国に対して、もう北朝鮮が中国を通じて米国に連絡する必要はないとのメッセージを送っている」とRFAに述べた。
米ナショナル・インタレスト誌もまた、このたびのトランプ大統領の北朝鮮入りについて「38度線を越えたこと以上に、北朝鮮を手中に収めているという中国共産党の戦略を覆した意味が大きい」と分析した。
中国政府主導の三者協議および六者協議は、数回行われてきたが、交渉の間、北朝鮮は口先の「非核化」を材料に米国、日本、韓国の経済援助を利用した。
トランプ大統領は2018年初め、中国側に北朝鮮の非核化への協力を申し出た。しかし3月には、韓国の文在寅大統領の仲介を得て、北朝鮮との直接対話の成立を発表。中国を交渉から除外した。
トランプ政権高官の発言から、北朝鮮の完全で不可逆的な非核化は短期間で完成しそうもない。しかし、北朝鮮から中国共産党の影響力を取り除くことが出来れば、目標達成までの大きな一歩とみなすことができる。
(翻訳編集・佐渡道世)