中国当局がこのほど発表した政策方針で、2020年までに香港で「社会信用システム」を導入すると示唆した。台湾の学者は、香港で同システムを導入すれば、香港市民が再び反抗すると指摘した。
香港では6月以降、中国本土へ犯罪容疑者の移送を可能にする「逃亡犯条例」改正案の完全撤廃を求めて、4回の大規模な抗議デモが行われた。
中国広東省当局は5日、「粤港澳(広東省・香港・マカオ)大湾区建設に関する3カ年行動計画」と「粤港澳大湾区における発展規劃綱要」を発表した。これによると、当局は2018~20年までの3年間、この3つの地域で「社会信用評価」の制度とシステムを全面的に構築するとした。当局は「重要な国家戦略」と位置付け、「一国二制度を推進する新たな実践だ」とした。
中国本土では、当局が2014年に同システムの実施を開始した。14億人の中国国民に対して、個人情報をデータベース化し、社会奉仕状況、税金の支払い状況、デモへの参加、インターネット上での発言や投稿、違法行為の有無などの情報を解析し、「信用スコア」を付与する。スコアの低い者は、ブラックリストに追加され、海外旅行、航空機や高速鉄道のチケットの購入、住宅ローンの利用などが禁止される。就職・転職、子どもの就学、結婚なども制限を受ける。
台湾最高学術研究機関、中央研究院の林宗弘・副研究員は、中国当局が香港で社会信用制度を導入すれば、高度な自治と言論の自由を定めた「一国二制度は完全に有名無実になるだろう」と述べた。逃亡犯条例改正案をめぐる抗議デモから、香港市民は、中国共産党の支配拡大と「一国二制度」の消滅に対して強く危惧している様子が見てとれる。
中国当局と香港政府は現在、実施について明言していない。
林氏は「この政策は実施されないよう望む。さもなければ、香港市民の中国当局に対する不信感をさらに募らせ、抗議活動の拡大と先鋭化が予測される」と話した。
中国国内外の有識者などは、中国共産党政権は社会信用システムを通じて、国民への監視を一段と強化しており、人権侵害に当たると批判してきた。昨年10月、ペンス米副大統領は「(作家の)ジョージ・オーウェルの描いた超監視社会のようで、人々の生活を厳しく統制しようとしている」と非難した。
(記者・徐翠玲、翻訳編集・張哲)