米カリフォルニア州拠点のケープ・プロダクションは、安全保障上の懸念や情報漏洩のリスクがあるとして、中国の大手ドローンメーカーDJI(大疆)への技術サービスの供給を停止することに決めた。
ブルームバーグ7月18日付けによると、同社は自社顧客に対して、中国DJIの無人機と互換性のあるソフトウェアの販売を中止する計画があると知らせたという。
中国DJIは何年もの間、ドローン世界販売台数トップを走る業界最大手。北米においてはシェア80%を超える。DJIは7月11日に、日経新聞に対して、中国国外で初めてとなるカリフォルニア州の組み立て工場を建設すると述べた。
一方、サイバーセキュリティーの重要性から、米国政府はファーウェイ(華為技術)やZTE、およびDJIについてもスパイ活動の疑惑があると認識しており、懸念を表明している。
ケープ社のクリス・リットラー最高経営責任者(CEO)は文書で、「顧客はさまざまな政府の発表を受けて、強く懸念するようになった」と述べた。ケープ社の決定について、DJI広報担当者はブルームバーグの取材に対して「残念だ」と表明した。
米国が2018年8月に施行した国防権限法(NDAA)では、中国製の無人機を米軍が使用することを禁止した。米議員たちは、無人機が中国政府に情報を送ったり、ハッカーに悪用されたりして、サイバー攻撃などを行う可能性があると指摘している。
国土安全保障省(DHS)は5月、中国製ドローンには機密ビデオを送信する恐れがあると報告をまとめ、米企業向けの警告として通知した。報告によると、無人機に搭載されたAI映像認識機器は、個人データおよび画像データを収集および転送することができるという。名指しはしていないが、DJIが念頭にあるものとみられる。
中国共産党政権が、2017年に施行した国家情報法では、中国国民や企業が国の情報活動に協力するよう要求している。
DHSの報告によると、世界中で飛行するDJIドローンは、収集したデータを中国当局が共有している可能性がある、とした。
リットラーCEOは、どの顧客がDJIに懸念を抱いているかは明言していない。また、米中貿易戦や米中の地政学的な対立が激化しているが、これがDJIとの関係を断つことの主因ではないという。
(編集・佐渡道世)