中国の海外投資は2019年、劇的に落ち込んでいる。米国による関税、安全保障上の懸念、および外貨準備高の圧力に直面していることなどが原因とみられる。
2019年上半期の海外投資は前年同期比で50%以上も減り、275億ドルだったという。米国エンタープライズ研究所(American Enterprise Institute、AEI)とヘリテージ財団(Heritage Foundation)による分析を、中国グローバル投資トラッカー(CGIT)がまとめた。
ベーカー&マッケンジー(Baker&McKenzie)法律事務所とニューヨーク拠点のロジウム・グループ(Rhodium Group)も、同様の調査結果を報告している。
中国商務部による、2018年の中国の対外直接投資(ODI)は4.2%減の1298.3億ドル(約8928億元)、金融分野以外のODIが0.3%増の1205億ドル(約8287億元)だった。
さらに、AEIとヘリテージ財団の報告では、中国の海外におけるM&A取引は、2019年上半期で昨年比60%減り、200億米ドルだという。
7月16日、中国商務部は6月の金融分野以外のODIが前年同期比0.1%増の3468億元(約504億ドル)と発表した。
CGITとベーカー&マッケンジーの両報告書は共通して、国営銀行の融資に大きく依存する国営企業の投資が減速していると指摘している。「中央政府は外貨を蓄えている。このため、中国国営企業は『グローバル化』を止めている」とCGITは書いた。
ベーカー&マッケンジーは、「国営投資家は完全に国内にとどまっている」「マクロ経済的な圧力、政治的な理由、海外投資の審査の厳格化により、中国資本は国内に計画的に残されている」と分析した。
この調査結果は、中国共産党政権が主導する100兆円規模の巨大経済圏構想・一帯一路のイメージとは相反している。
多くの発展途上国と一部の先進国は、中国融資を歓迎していた。しかし、投資は長期的な視点と持続性が重視されるため、国際的な経済、貿易、安全保障上の圧力により、今後、対外投資に向いていた中国の能力は、国内へ押し戻されようとしている。
その象徴的な出来事は、米国との貿易戦争だ。明らかに中国の経済成長の鈍化の要因である。中国の国内総生産(GDP)は6.4%の第1四半期から、第2四半期には6.2%を記録した。これは1992年に始まった統計以来、最も遅いペースとなった。
また、貿易の押し戻しは、中国の輸出を弱体化させている。6月のドル輸出は前年同期比1.3%減となり、国際収支の懸念が高まった。米国による、華為技術(ファーウェイ)や他の中国ハイテク企業に対する規制は、成長材料を失わせた。
中国商務部の高峰報道官は7月25日、2019年上半期の中国から米国への金融分野を除く直接投資額は19億6000万ドル(約135億元)と発表した。前年同期比で20%減となった。
また、中国海関(税関)総署の7月12日の発表では、同年上半期の貿易総額は前年同期比2.0%減の2兆1612億ドルで、米国との貿易総額は14.2%、日本とは4%、韓国とは8.6%それぞれ減少した。
ベーカー&マッケンジーの報告によると、同年上半期の中国から北米と欧州との取引は前年同期比で18%落ち込み、2014年以来の低水準になったという。この報告とCGTIの報告はどちらも、中国の貿易の減少は、資本管理が主な原因とみている。
CGITは、「主に国際収支の悪化と為替レートの下落に対する懸念から、投資や建設資金の調達に使われる外貨が制限されている」とした。
さらに、兆候は見えないが、状況が変化するまで、中国の勇み足の世界的なビジネス展開は2016年のピークに再び近づくことはできないだろう、とCGTIは伝えている。
(翻訳編集・佐渡道世)