人民元基準値、5日間連続1ドル7元台に設定 当局の元安容認姿勢が鮮明に

2019/08/14 更新: 2019/08/14

中国の人民元相場が対ドルで、1ドル=7元の心理的大台を割り込んだ後、米政府は中国を「為替操作国」と指定した。中国当局が元安を容認するなか、外資企業と中国企業の海外への生産移管の加速化、失業者の急増など、中国経済がさらに苦しい局面に直面するとみられる。

12日、上海外国為替取引市場では、人民元相場は対ドル為替1ドル=7.06元台に元安・ドル高水準となった。

13日、中国人民銀行(中央銀行)は人民元の対ドルの基準値を1ドル=7.0326元と、12日の1ドル=7.0211元から115ポイントの元安水準に設定した。2008年3月25日以来の元安水準となった。また、14日も対ドルの人民元基準値を1ドル=7.0312元に設定した。前日比14ポイント元高・ドル安となった。

当局が5営業日連続、1ドル=7元台にしたことで、国内外に元安容認姿勢を明白に示したこととなった。

9月1日、米政府は第4弾関税措置を実施し、3000ドル相当の中国製品に対して10%の関税を課す予定だ。トランプ政権は今後、この10%の税率を25%に引き上げる可能性があると示唆している。

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、英調査会社、キャピタル・エコノミクスのアナリストは、第4弾対中制裁関税の関税率が10%から25%に引き上げられた場合、中国国内物価上昇への圧力はこれまでの3回の制裁措置と比べて数倍も重いと指摘した。また、国際通貨基金(IMF)は9日に公表した調査報告で、第4弾制裁措置の関税引き上げで、来年中国の国内総生産(GDP)伸び率が0.8%下がると推測した。

中国当局は今後、景気テコ入れ策を強化し、より緩和的な金融政策を打ち出すとみられる。しかし、当局の元安容認姿勢で元は対ドルで一段と下落する恐れがあり、これに伴う資金流出、流動性の低下が予想されるため、中国当局は難しいかじ取りを迫られる。

仏投資銀行、ナティクシスが12日に公布した市場調査報告書によると、4~6月期の中国の資本純流出は、1~3月期の210億ドルから大幅増の850億ドルに達した。ナティクシスは、米の新たな対中関税措置と「為替操作国」認定で、元安が一段と進み、中国の資本流出が加速するとの見方を示した。

VOAは、中国当局は海外への資金流出を阻止するために、海外企業の買収審査や海外でのクレジットカード利用の制限強化など、資本規制をより厳格化する可能性が高いとの見方を示した。

在米中国人経済学者の夏業良氏は12日、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、米政府の対中関税措置と「為替操作国」認定により、長い間、中国経済に存在する「構造的欠陥」をさらに浮き彫りにしたとの見方を示した。現在、中国の厳しい経済情勢は中国の社会制度と密接に関係している。

夏氏は、「経済の現状は中国のイノベーション力の低さを反映している。中国当局はここ数年、国内でイノベーション促進に取り組んでいる。しかし、技術革新を促すための制度はない。ほとんどの投資家は、短期目標しかなく、投機だけをしている」と話した。

金融学者の賀江兵氏はRFAに対して、「貿易戦が始まった後、海外企業が相次いで中国にある生産ラインを外国に移管したことが中国経済に致命的な打撃を与えている」と述べた。「世界の工場」として世界第2の経済体に躍進した中国にとって、製造業サプライチェーンは最重要な産業だ。トランプ米政権の関税措置を回避するために、中国企業も海外への生産移管を急いでいる。

中国国家統計局が発表した7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.7。景気改善と悪化の分かれ目である50を3カ月連続下回った。また、7月の生産者物価指数(PPI)は前年比0.3%低下した。約3年ぶりのマイナスとなった。

専門家は、中国製造業の不振で、工場の倒産急増と「失業ラッシュ」を懸念している。また、米中対立の激化で、中国経済のけん引力の1つである輸出のさらなる低迷を警告した。

ロイター通信の報道では、1~7月までの米中貿易総額は前年同期比8%減の2兆1000億元となった。中では、中国の対米輸出が同2%縮小し、米国から中国への輸入は約25%減った。米シティバンクは、今後中国の対米輸出がさらに2.7%減少し、これによって中国のGDP伸び率が0.5%減速するとの見通しを示した。

(翻訳編集・張哲)

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