カナダのトロントで18日、香港の逃亡犯条例改正案に反対するデモで、武力を行使した警察を支持する集会が行われた。集会に、中国人留学生がずらりと並ぶ高級スポーツカー・フェラーリで登場し、話題を呼んだ。しかし、派手なパフォーマンスが裏目に出て、中国国内のネットユーザーは留学生の親が腐敗幹部ではないかと個人の特定に動き出した。
撮影された動画には、中国の国旗を掲げたフェラーリ9台が続々と駐車場を出ていく様子や、所有者とみられる若者らが集会現場で中国人留学生を率いて、香港人留学生や香港デモ支持者らに対して、「貧乏人」と叫びののしる様子が映し出された。
20日、中国国内インターネット上に、数台のフェラーリで集会に乗り込む様子を捉えた動画が投稿されると、瞬時に注目を集めた。「腐敗幹部らの家族ではないか」と批判が殺到したため、ネット検閲当局が急いで動画と関連投稿を削除した。
ツイッターに同動画が投稿されると、ユーザーからは「ドライバーの身元を調査せよ」「中国では今も腐敗を取り締まっているから、この人たちの親を調べよう」「車のナンバーを写真撮影すれば、すぐにどこの豪邸に住んでいるのかがわかる」などの声が上がった。
「トロントの中国人留学生が高級車で集会に参加」と題するこの動画が中国国内に伝わると、中国当局の世論誘導で香港デモに批判的な姿勢だった中国人ネットユーザーは論調を変え、「なぜ留学生がフェラーリを買えるのか?お金はどこから?明らかにアルバイトで得た収入ではない」とバッシングを始めた。
中には中国本土と香港の経済状況を比較し、中国国民の収入がはるかに少ないと指摘する声も上がった。
「2018年(中国国内)の1人当たりの国内総生産(GDP)が9732ドルだったのに対して、香港は4倍以上の4万6078ドルであった。親のカネでカナダでフェラーリを運転して、香港人を『貧乏人』と罵倒した君らは、中国国民にも同じ言葉でののしるのか。香港人が貧乏人であるなら、われわれ中国人は何になるのか?」
中国人ネットユーザーは怒りの矛先を中国共産党政権にも向けた。
「フェラーリの所有者が汚職に関わっていないかを徹底的に捜査するよう求める」
「汚職官僚の子どもだ」
「皮肉なのは、フェラーリに乗っている若者の親が、集会で国旗を掲げて『愛国』と訴える留学生の親を搾取していることだ」
「なぜ彼らがこんなに愛国するのかがわかった」
「このような『愛国者』らは本当に恥知らずだ」と次々と強い不満をあらわにした。
21日、カナダの中国系住民が利用するネット掲示板で、「先頭の紅いフェラーリに乗っているのは山東省の韓寓群・省長の孫だ。その後ろにいるのは、山東省の王仁元・副省長の孫、(同省)済南市の謝玉堂・党委員会書記の息子、臨沂市の連承敏・党委員会書記の息子だ」との情報が伝えられた。
この投稿は中国版ツイッター「微博」にも転載された。
ネットユーザーの1人は、「この既得権益者の子女らは高級車に乗りながら、愛国を訴えている。実際に、彼らは祖国を愛しているのではなく、父親らが権力と地位を失うことを心配している」と言い切った。また、中国当局が主導する「愛国運動」は国民をもてあそぶ茶番であるとの意見があり、それに関与しないように呼び掛けるネットユーザーもいた。
微博では現在、同投稿は当局によって削除されている。
(翻訳編集・張哲)