香港警察は8月31日午後11時頃、地下鉄で連日続いているデモに対する当局の対応に強い不満を示した白人男性を拘束した。一方で、中国国内インターネット上では、白人男性が米中央情報局(CIA)の幹部だとの噂が広がった。中国官製メディアは相次いで、香港警察がCIAの工作員を逮捕したと報道した。フェイクニュースだと指摘され、数時間後に削除された。
現場にいた大紀元のカメラマンが一部始終を撮影していた。
中国メディア「鳳凰網」「今日頭条」「網易」などの報道は、「中国国内ネットユーザーが、香港情勢をかく乱する狙いで(香港に)入り込んだ米CIAの指揮官が逮捕されたと暴露した」と示した。
各メディアはこの「CIA幹部」の中国語の名前は「包偉忠」で、「香港国際空港で身柄拘束された」とし、男性の身分証明書を公開した。しかし、同証明書は、米CIAを示すものではなく、報道機関関係者を意味する「プレス」と書かれている。中国側は報道で、大紀元が撮影した動画を大幅に編集してから流した。
中国メディアの目的は、当局の「米政府が香港デモを操っている」との論調に合わせるためにあるとみられる。同報道が掲載されると、直ちに国内外に伝わった。ツイッターでは「偽ニュースだ」「CIAの工作員が自ら進んで網にかかるなんて思えない」などとの指摘が相次いだ。
大紀元のカメラマンによると、31日夜、帰宅するために地下鉄を利用した際、偶然に男性と同じ車両に乗り合わせた。当時、男性は警官隊がデモ参加者を武力で拘束しているのを目撃し、感情が高ぶっていた。英語で車内にいた乗客に対して、香港政府への不満を大声で訴えた。男性は「自分は香港にすでに24年住んでいる」「香港政府がなぜこのように香港の若者を鎮圧しているのかが理解できない」「中国(当局)は一国二制度、香港の高度な自治を認可しているのに、なぜ辞職したいという林鄭長官の申し出を認めないのか。香港には高度な自治が全くないと言える」と叫んだ。
地下鉄が茘景駅に到着し、下車した男性は駅構内にいた警官と口論になった。
男性は駅の下側の通路に入ろうとした際、7、8人の警官に行く手を阻まれた。警官は、駅がすでに封鎖されたため、通路の利用はできないと男性に説明した。しかし、男性は興奮し、警官に理由を述べるよう要求した。警官は英語で説明できないため、強い口調で男性に対して、直ちに離れろと命令した。男性は大声で「香港にはまだ高度な自治があるのか」と警官に叫びながら、無理やりに通路に入ろうとした。数人の警官が男性を制圧し、床に倒した。その後、警官は男性を上のホームに連れていったが、男性は再び怒鳴りながら、下側の通路に進入した。その直後、警官らは男性を拘束した。
米情報当局の関係者は大紀元に対して、白人男性が米CIAの諜報員である可能性は低いと指摘した。
「工作員は公の場で目立たないようにするのが重要だ。大声で自分の政治的主張を述べるのはスパイとして最大のタブーだ。CIAは、所属の工作員に対して、現地の警察当局と衝突しないようにとの規定がある。さらに、この男性が香港人警官と衝突した際の動きを見る限り、全く訓練を受けたことがないとわかる」
この関係者はさらに、「興奮状態にもかかわらず、英語をしゃべる男性の話す速度が遅くなっている。英語を母国語とする国の出身者ではないと考えられる」と述べた。
現時点では、同男性の国籍、職業、名前は明らかになっていない。
(香港デモ取材チーム、翻訳編集・張哲)