¥白血病を患っていた6歳の男の子は、北京の病院で、患っていない疾患に対して未承認の治療法を実施されていたことがわかった。男の子は多臓器不全により5月、死亡した。少年の両親は訴訟の準備を進めている。
少年の母親は治療記録を整理したとき、博仁病院の医師が、中国の臨床治療としては承認されていない、T細胞ベースの免疫治療の試験を男の子に行っていたことを発見した。
2015年、当時2歳の範裕喆くんは急性リンパ性白血病と診断された。上海の病院で治療を受けたが、退院後に再発。医師の紹介で、北京の博仁病院に移り、CAR-T(カーティ)細胞療法と,骨髓移植を受けた。骨髄のドナーは父親。
CAR-T細胞療法は、最新の白血病治療法で、日本では2019年3月に承認されたばかり。この治療は、患者の免疫細胞(T細胞)を採取して、遺伝子改変技術を使って強化・増殖させ、体内に戻す方法。患者の細胞を、がんへの攻撃力を高める治療法。
2018年8月、家族は医師から、裕喆くんはEBウイルスに感染し、EBウイルス関連リンパ増殖性疾患に罹ったと聞かされた。博仁病院で2回、このEBウイルスを除去するため、CAR-T細胞療法の一種であるEBV‐CTL(EBVウイルス特異的細胞傷害性T細胞療法)を行った。
しかし、その後、裕喆くんには皮膚、肝臓、目など広範にわたり免疫拒絶反応が起きた。これは、父親から受けた骨髄と血しょうの免疫細胞が、通常の裕喆くんの細胞を攻撃したと考えられる。
肺の機能不全という危機的な状態に陥った裕喆くんと家族に、医師は、2つの肺の移植を勧めた。
2019年2月、裕喆くんは肺移植で知名度の高い北京の日中友好病院に移った。移植手術は成功したものの、裕喆くんは3カ月後、亡くなった。
患っていない病気の治療で死亡
家族によると、治療には600万元(約7500万円)をかけ、そのうち博仁病院では400万元を超える治療費を支払ったという。両親は家や車などの資産を売却し、現在も借金を背負っている。
母親は、子供が受ける必要のない治療を受けて、「実験台」にされたのではないかと疑い、検査や治療記録を病院から取り寄せて確認した。
すると、裕喆くんは、患ったと聞かされたEBウイルスは、検査で「陰性」であることが分かった。にもかかわらず、裕喆くんの担当医は「陽性」とし、最新療法を含む計画を立てた。別の当直医師は、EBV検査は「骨髄と血しょう分析に基づいてEBウイルス陰性」と記録していた。
記録によると、裕喆くんのEBウイルスの治療計画には、家族の承諾を必要とする「EBV-CTL細胞治療」に、「臨床試験の受け入れ患者」として、家族に説明も了解もなく無断でチェックされていた。
さらに、臨床試験の場合、使われる医薬品は無料で提供される法律があるにもかかわらず、病院側は家族に請求を出していた。
家族は7月、博仁病院のある豊台保健委員会と豊台医療管理局に苦情を申し立てた。
家族は、博仁病院を相手取り訴訟する予定。担当弁護士からは、2016年に中国国家健康計画委員会が規定した規制に基づき、裕喆くんが受けた細胞治療法は試験でのみ使用でき、臨床治療には適用できないことがわかった。
7月
(文・李熙/翻訳編集・佐渡道世)
※男の子の年齢に誤りがあり、訂正します。