女優メリル・ストリープ主演のハリウッド映画『ザ・ランドロマット―パナマ文書流出―』は中国の臓器売買ビジネスを取りあげた。
同作は、世界の富豪たちの不正な資金洗浄、脱税、架空企業による資産隠しなど、腐敗した世界の金融界にはびこる闇を描くコメディー映画。試写会が9月9日、カナダのトロントで開かれた。監督はスティーブン・ソダーバーグ氏。原作は書籍『恐ろしき世界(原題:Secrecy World)』
映画には、収監された信仰者や少数民族、政治犯ら「無実の囚人」から臓器を強制的に抜き取り、国内外の臓器移植希望者に提供するという、「中国臓器ビジネス」を取り上げている。ハリウッドで同問題を描写した映画は初。
映画は、巨万の富を得た薄熙来・元中国共産党中央委員会委員と妻・谷開来をモデルとする人物が登場する。
裁判記録や中国国内報道によると、夫婦は、交流のあったイギリス人実業家ニール・ヘイウッド氏を中国で毒殺した。この殺人事件の捜査により、ヘイウッド氏を通じて薄一家が数十億ドルにものぼる不正に蓄財した財産を、海外送金していたことが明らかになった。
原作の書籍『 恐ろしき世界』の著者であるジェイ・バーンスタイン氏は、映画公開前に記者団に次のように語った。「映画にはパナマ文書と関係のある中国で起きた実話を描いている。ほんのワンシーンだが真実を詳細に表現している」とコメントした。
薄と谷、その部下だった王立軍・重慶市公安局長(当時)は、法輪功学習者への迫害に積極的に加担し、彼らを収監し、「強制的な臓器のためのドナー」として刑務所に送った。
映画は、中国臓器狩りの章を「第五の秘密:殺害(The Fifth Secret:Killing)」と強調する。映画には、公園で煉功していた法輪功学習者が連行され、医療従事者により法輪功学習者の臓器が摘出される。胸を切開して心臓や腎臓を取り出したり、目から角膜をナイフで切り取ったりする場面がある。専用の保存庫に入れられた臓器は、数万ドルの値段が付いている。
ほかにも、谷がヘイウッド氏を毒殺し、薄と共にフランスへの渡航計画を立てるが、逃亡寸前で中国警察に逮捕されるシーンがある。
中国国内では、映画『ザ・ランドロマット―パナマ文書流出―』は情報統制の対象となり、映画の内容を知ることはできなくなっている。米ハリウッド映画の情報を伝える中国国内サイトも、同映画に関する情報はない。
映画はおもに、交通事件で死亡した夫の保険を調べる妻(メリル・ストリープさん)の視点から、富豪たちの財産隠しを手伝う、パナマに住む弁護士2人(ゲイリー・オールドマンさん、アントニオ・バンデラスさん)の仕事について描いている。
オンライン映画放送サービス・ネットフリックスが配給するこの映画は、8月に第76回ベネチア国際映画祭コンペティション部門作品に出展された。9月にはトロント国際映画祭でも上映。10月に一般公開が予定されている。
(翻訳・佐渡道世)