9月20日、セルビアの首都ベオグラードでは、セルビア人警察官と中国の警察官との共同パトロールが始まった。近年、欧州では、首都圏に中国警察や監視カメラを設置する都市が増加している。
セルビア政府は、中国人観光客や労働者の増加で発生する問題に対処するため、中国警察を要請した。
数千人の中国人観光客がベオグラードや他のセルビアの都市を訪れている。中国の広域経済開発構想「一帯一路」に参加するセルビアのほか、バルカン半島諸国は、鉄道、道路、発電所など複数の大型インフラプロジェクトを抱え、中国人労働者を受け入れるほか、中国輸出入銀行から数十億ドルの融資も受けている。
ロイター通信の取材に答えた、セルビア駐在の北京出身の中国の警官は、中国人向けのホットラインを開設したという。セルビアの警官は、中国の警官には逮捕する権限がなく、観光客とセルビア警察とを仲介する役割だとした。
セルビアにおける中国警察の活動について、5月、両国の内務大臣が覚書を交わした。それによると、サイバー犯罪対策のための特別警察部隊の共同訓練も可能だという。
中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)は、個人認証の可能な監視カメラをベオグラードに何百台も設置している。防犯対策として同社が企画する都市監視システム「セーフシティ」を取り入れている。ロンドンの一部にも「セーフシティ」が採用されている。
こうした中国警察の受け入れは、他の欧州諸国でも行われている。同じく一帯一路参加の覚書に署名したイタリアは、訪問する中国人観光客増加への対応として、中国警察との共同パトロールをローマ、ミラノ、ベニスで行っている。両国の警察は2017年から、中国およびイタリアでの共同訓練を行っている。
人民日報によると、クロアチアは「安全な観光キャンペーン」と題した治安対策を行っており、19カ国から800人の警官が現地で防犯訓練を行った。中国も8人の警官が参加しており、首都ザグレブの観光地を巡回している。
駐スウェーデン中国大使館は最近、現地紙に対して「スウェーデンは増加する中国観光客への防犯対策が脆弱である」と主張した。大使館によると、今年は8月までに110件の中国パスポート「盗難」届けがあったという。しかし、スウェーデンのジャーナリスト、ヨイエ・オルセン氏は、スウェーデン警察の発表では確認できていないとした。
スウェーデンの首都ストックホルムでは2018年9月、現地警察とホテルの対応に不満を抱いた中国人観光客3人が路上で泣いたり叫ぶなどの騒ぎを起こした。中国外交部も「人権国家を標榜する国が人権を侵害した」と批判を展開し、両国の外交問題に発展した。
在スウェーデン中国大使桂從友氏は、「中国人が略奪などの被害に遭わないよう、効果的な措置を取らなければならない」と述べている。オルセン氏は、スウェーデンでも、セルビアやイタリアのように中国警察によるパトロールが検討されるかもしれないと言及した。
(編集・佐渡道世)