気候変動の疑似科学が一般的に受け入れられるようになった理由

2019/10/01 更新: 2019/10/01

政治家および企業のリーダーらはニューヨークで行われた気候ウィークに集まり、地球温暖化と戦うための有意義な行動を呼びかけた。しかし提案された解決策はコストが高いことを考えると、提案された「治療法」は「病気」そのものよりも悪いのではないか。

太陽光パネルのついた家で育った自由主義者の私は、常にエネルギーを意識し、環境問題に対する活動家の解決策に賛成してきた。なので、天体物理学者としての研究で、気候変動は私たちが普段聞いているよりさらに複雑だという結論に達した時、私はすごく驚いた。この「病気」はより良性であり、シンプルな緩和的解決策が目の前にある。

始めに、メディアでよく聞く話で次のようなものがある。20世紀の温暖化のほとんどは人為的であり、気候は二酸化炭素の変動にとても敏感であり、したがって将来の温暖化は大きく、すぐに起こるというような話だ。しかしこれらは直接的な証拠に裏付けられておらず、ただの不安定な循環的推論にすぎない。私たちは、人間が少なくともある程度の温暖化を引き起こしたと「知って」いて、温暖化が起こっていると観測し、そして温暖化の他の原因が見あたらないので、一見納得できる推論のように思える。

しかし、二酸化炭素が大幅な温暖化を引き起すことを証明できる第一原則に基づく計算はない。存在しないのだ。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると、二酸化炭素が2倍になることで気温は1.5から4.5摂氏度上がるという。このすごく大きな不確実性は1979年のチャーニー委員会にまでさかのぼる。

実際、二酸化炭素の変動や他のエネルギー収支の変化が大幅な気温の変化を引き起こすことを示す証拠はない。しかし、逆の証拠ならある。過去5億年で二酸化炭素は10倍に増加したが、気温との関連性は全く見つからなかった。クラカタウ火山のような大きな火山噴火に対する気候の反応を見ても同じことが言える。

どちらの例を見ても、二酸化炭素が2倍になるごとに1.5度上昇という上限を超えることは避けられない。敏感なIPCCの気候モデルの予測よりはるかに限定的だ。しかしIPCCの気候モデルの高い敏感性は20世紀の温暖化を説明する上で必要だ。または誤ってこう思われてきた。

2008年、私は1世紀にも渡る様々なデータを使い、11年の太陽サイクルと同期して海洋に入る熱量は、単なる総太陽出力の変化による比較的小さな影響より一桁も大きいことを示した。つまり太陽活動の変動は、気候に対するいわゆる放射強制力の大きな変化となる。

20世紀に太陽活動は大きく増えたため、温暖化の主な原因は太陽であると考えられる。そして、二酸化炭素と太陽活動による放射強制力の変化はさらに大きいため、気候の敏感性はもっと低いはずだ(二酸化炭素が2倍になるごとにおよそ1から1.5摂氏度)。

上記の研究を発表して以来10年間、研究結果が覆されることはなく、さらに衛星によるデータが太陽活動の大きな変動を裏付けた。この確かなデータに照らし合わせると、温暖化の主な原因は人間ではなく、いかなる排出シナリオによる将来の温暖化もはるかに小さなものになるということは明らかなはずだ。

残念ながら、前述の例や、過去20年間の対流圏温暖化がモデルの予想よりもはるかに小さいことなどの警告的な証拠に対して、気候コミュニティは盲点を作り上げた。これにより、一般の人々が触れる気候変動に対する見方は非常に歪んだものとなっている。矛盾に満ちた不安定な科学的状況なのに、避けられない災難として人々に伝えられている。

一般の人々がこのような考え方を持っていることを踏まえると、グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)さんのような児童活動家が現れる現象は驚きではない。しかしもっとも厄介なのは、このような考え方により、科学を一般の人々に伝えにくくなっていることだ。

先月私が受けたフォーブス誌の取材がその一例だ。記事がネットで掲載された数時間後、「当社の編集基準を満たさなかった」という理由で編集部に削除された。いかなる科学的な議論も政治的に正しくないものとなった今、一般の人々は擬似議論による破滅的なシナリオを受け入れるようになってしまった。

温暖化が起こっているという証拠は、その原因を教えてはくれない。誰かがいわゆる「97%の合意」を持ち出すたびに、その人は確かな科学的な議論を持ち合わせていないことを示している。科学は民主主義ではない。

欧米諸国が近い将来この進行中のヒステリーを克服できるかどうかに関係なく、10年から20年の時がたつと、それは過去のものとなるだろう。モデルとデータの不一致が大きくなるだけでなく、より強力な力がゲームのルールを変えるからだ。

中国はもはや石炭に頼ることができないことに気づくと、著しく増加しているエネルギー需要を満たすために、原子力に多額の投資をするようになるだろう。そうなると、欧米諸国も遅れを取らず、安くてクリーンなエネルギーを手に入れ、炭素中立な燃料を生成し、さらに最近の厄介な焼畑農業が必要なくなるほどの安価な肥料を手に入れるだろう。

欧米諸国はその時、地球温暖化は深刻な問題ではなく、そして将来も深刻な問題にはなり得ないことに気づくだろう。今現在としてはとりあえず、大気中の余分な二酸化炭素は、特に乾燥地域で役立っているように、農業生産量をあげることさえできる。やはり二酸化炭素は植物の食べ物なのだ。

Nir Shaviv教授(@nshaviv)はエルサレムのヘブライ大学のRacah物理研究所の所長を勤めている
 

関連特集: