米国のプロバスケットボール(NBA)では、中国政府による自由な言論への統制に反発の声があがっている。トルコ出身の選手は、全体主義政権による自身の迫害体験をメディアに語った。
国民的人気スポーツであるNBAに対する中国当局の言論統制のための圧力が、最近米社会の注目を集めている。NBA所属の人気チーム幹部がSNSで、香港の反政府デモへの支持を表明したことに中国が強く反発。当局は中央テレビ(CCTV)のNBA試合中継を中断し、中国企業のスポンサー取り消しを呼び掛けた。
中国官製紙・環球時報の英字版は9日の記事で、「自由な言論は決して代償なしではない(Freedom speech is never free)」と主張した。記事は、香港デモを支持するNBA幹部とそれに対する中国当局の反発は「なぜ(中国市民の)気分を害させるのか、少なくとも西洋世界が彼らを理解するのに役立つだろう」と書いた。
こうした言論への抑圧について、トルコ出身でNBAボストン・セルティックス所属のエネス・カンター(Enes Kanter)選手は、自身の全体主義による被害をメディアに語った。同氏はこれまでも、SNSや米メディアを通じて、トルコのエルドアン政権による人権侵害や自由への抑圧について批判的な意見を表明し続けてきた。
米国に2009年に渡った彼だが、体制異見者であるとの理由で、パスポートが無効となり帰国できず、トルコにいる家族と5年間面会できていない。家族もまた、出国が許されないという。
動画ニュースメディア・NowThis Newsの取材に応じたカンター氏は、トルコにいる両親の置かれている状況を話した。「父親は買い物もろくにできない。『エネスの父親だな』と言われ、唾を顔にかけられたことがある。母親も通りを普通には歩けない」。2018年、遺伝子学者の父親は「テロリストと共謀した」との容疑で投獄され、職を失った。兄弟も仕事に就くことができず、家族は毎日、何らかの嫌がらせを受けている。
カンター氏は2017年、チャリティー試合のためにインドネシアに滞在中、ならず者に拉致されそうになったことがあるという。同氏は、父親は10~15年の禁固刑が下る可能性があるため、米国へと連れ出すことを考えている。「何ができるかわからない。自分はパスポートさえ失効している。でも私は何が起こっているかを、多くの人に伝えたい」と述べた。
迫害を受けるカンター氏は、中国当局の主張する「自由は何の代償なしではない(Freedom is not Free)」は身を持って体験している。しかし、「自由と民主主義のために立ち上がろう。たとえすべてを犠牲にしたとしても」と、圧力に屈しないことを表明している。カンター氏はさらに15日、ツイッターで「自分が正しいと信じていることを貫く。その代償を払う用意が私にはある」と強調した。
中国では若者を中心にNBAの人気が高い。双方の対立が発生して以後に上海で予定通り行われたロサンゼルス・レイカーズとブルックリン・ネッツのプレシーズンマッチは、満席で高い人気を示した。中断されていた中央テレビによるNBAの試合中継は14日、再開した。
(翻訳編集・佐渡道世)