台湾大学、台湾師範大学など複数の大学の学生会は、中国共産党の統一戦線による訪中交流会をボイコットするよう呼びかけた。
台湾大学学生連合、大学院協会、台湾師範大学学生会、清華大学学生会ほか多くの大学組織が10月16日、台北で集会を開いた。学生たちは「中国共産党のキャンパスに対する浸透に反対」のスローガンのもと、天津大学で開催予定の中国共産党統一戦線の「海峡両岸青年学生のリーダーシップフォーラム」をボイコットするよう呼びかけた。
台湾大学学生組合会長の凃峻清氏は、統一戦線による交流会に参加することは、「中国の統一戦線の工作を受け入れる」ことになり、両岸が友好だという誤ったメッセージを発信してしまうと述べた。
2008年以来、天津大学は毎年、同フォーラムを開催している。台湾の大学生に宛てた招待状によると、2019年は中国共産党政府による「両岸経済と文化交流の協力を促進する措置31条公布1周年」にあたるとして、共産党による指導と交流会の重要性を強調している。同条例は、「両岸は一つの家族」と例えている。
台湾大学学生協会などは報道陣を通じて、すべての学生に対して統一戦線組織の行事への参加をやめるよう呼び掛けた。また台湾政府には、もし台湾の学生が大陸に渡った場合、身の安全の保護を強化するよう求めた。集会に参加した大学組織は、台湾の大学で統一戦線の浸透工作が強まり、中国の集権統治が台湾にまで拡大することに警戒を促した。
台湾国営通信・中央社によると、大陸業務を管轄する台湾政府の大陸委員会は、中国共産党が2019年1月2日に対台湾政策「五カ条」を公布した後、台湾の学生に対する統一戦線の工作が強まったという。文化、教育交流の名義で、台湾の教師や学生を頻繁に大陸に招いている。
五カ条は、統一への強い意欲を示し、初めて台湾で一国二制度の実現に言及した。
また、台湾の大陸委員会は7月5日にも、中国が掲げる「両岸一つの家族」について、「統一戦線工作の文言」として非難するコメントを出している。中央社によると、中国共産党政権が蔡英文政権に対して政治・軍事圧力を強めるなか、「家族」と形容するのは矛盾だとして「台湾人民は(策略を)とっくに見抜いている」と強調した。
台湾教育省は、大陸との文化交流に政治的意図があってはならない、と教育機関に注意を呼びかけている。
台湾立法府(国会に相当)で10月17日、民進党・黄国書議員は、苗栗県の約70人の中学生が約10日間学校を休み、福建省を「スポーツ交流」の名目で訪中し1週間滞在したことについて質問した。背景には統一戦線組織である「海峡両岸社会組織サービスセンター」の支援があり、「なぜ大陸行事のために通常の授業を休ませることができるのか」「多すぎる『スポーツ交流』の行事に警戒しなければならない」と述べた。中学校側は、企画の政治的な背景を確認できていなかったと回答した。
2018年8月、米議会超党派委員会の米中経済安全保障問題諮問委員会が、中国統一戦線の海外工作について報告書を出している。それによると、共産主義政党の掲げる統一戦線とは本来、「大敵(権威者)を打倒するために徒党を組んで闘争する」とのイデオロギーがある。しかし現在は、国外の中国大使館や領事館、言語学習機関・孔子学院、中国官製の友好組織、カルチャークラブ、中国人留学生組織などを通じて、共産党への異論を抑制し、「中国の良い話を伝える」ソフトパワー戦略を展開している。その狙いは、外国組織や国際機関のなかで、共産党政府の意向にかなう決定がなされるよう世論を操作することにある。
(翻訳編集・佐渡道世)