香港では11月に入ってから、市民とデモ隊を鎮圧する警察の間で衝突が激化している。専門家は、中国当局が10月末に開催した共産党第19期中央委員会第4回全体会議(4中全会)で、香港情勢について党内で意見が一致し、抗議者への取り締まりを一段と強化するよう香港の林鄭月娥長官に命じたとの認識を示した。
8日、抗議デモに参加したとみられる香港科技大学の男子学生が死亡したと伝えられた。同日、ソーシャルメディア上では16歳の少女が拘留中、警官らに集団レイプされたとの情報が流れた。9日、中国当局の香港・マカオ事務弁公室の張暁明主任は、「香港はまだ基本法(憲法に相当)23条が定める立法を完全にさせなければならない」とし、「香港独立分子を防ごう」との声明文を出した。同23条は、国家分裂や政権転覆を図る政治活動や言論の自由を制限する「国家安全条例」の制定を求める内容だ。
また、11日、西湾河の幹線道路で警官は、至近距離から抗議者2人に向かって計3発の実弾を発砲した。うち1人が重体になった。同日、九龍半島での抗議活動では警察の白バイ1台が若者らのデモ隊に猛スピードで突っ込み、2人が負傷したと報じられた。
12日、警察当局は香港中文大学や香港理工大学など複数の大学で、デモ隊への強制排除を行った。中文大学では、深夜まで警官隊がデモ隊に催涙弾やゴム弾などを発射し続けた。香港メディアによると、少なくとも60人が負傷した。
中国人法学者の龐氏は11日、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、「中国当局は4中全会の閉幕後、党内の派閥闘争が一段落したため、香港情勢への対応に新たな余裕が生まれた。そのため、当局は今、香港に力を集中させている」との見解を示した。
今月初め、習近平国家主席と林鄭月娥・行政長官が会談した。習氏が林鄭氏に対して、「深く信頼しており、あなたの仕事を十分に評価している」と話した。龐氏は、「習氏の言葉と現在の香港警察の取り締まり強化から、明らかに中国当局が香港政府と警察に対して指示したと推測できる」と話した。
いっぽう、大紀元のコメンテーターを務める唐浩氏は、「4中全会後、一日も早く香港情勢を沈静化したいという中国共産党の意欲が強くなった」と指摘した。
5カ月以上続いた香港の抗議活動は、米中通商協議の行方に影響を与えているほか、来年1月に総統選が行われる台湾で反中国共産党の蔡英文総統陣営にとって、香港情勢は追い風になっている。多くの台湾市民が中国当局の本質を認識できた。国際社会も中国当局への非難を強め、「今年、政権奪取して70年の節目を迎えた中国共産党のメンツが丸潰れとなっている」
唐浩氏は「4中全会では、中国共産党内で香港情勢の沈静化を加速させることで意見一致した可能性が高い。香港のデモが長引くと、中国国内にも影響が広がり、中国共産党政権を揺るがしかねない事態になると中国当局は恐れているだろう」と話した。
同氏は、「中国当局は今後、武力鎮圧を正当化し、さらに多くの『暴徒』を摘発する」との見解を示した。「『暴徒』が増えれば、社会的な恐怖が広がり、市民の若い抗議者への同情と支持が薄れると中国側は考えているだろう」
11日、香港警察は、馬鞍山地区の歩道橋で男性市民1人がデモ隊と口論した後、黒い服を着た覆面の人物に液体をかけられ火をつけられたと発表した。記者会見で、警察は当時の様子を捉えた動画を公開し、「暴徒ら」による非常に衝撃的な事件だと非難した。
林鄭長官は11日夜の会見で、「絶対に香港を破壊する暴徒の思いのままにはさせない」「デモ隊の政治的要求に絶対に応じない」などと抗議者を痛烈に批判した。しかし、警官が丸腰の抗議者に発砲したことについて、長官は「調査中だ」にとどまった。
中国官製メディア「環球時報」「新京報」などは、男性市民が火を付けられた様子を大々的に報道した。いっぽう、ツイッターなどでは同事件はでっち上げの可能性があるとの指摘が上がっている。
(翻訳編集・張哲)