香港情勢が緊迫化している。香港警察が11日、香港島東部の西湾河で若者に向けて実弾を発砲した。これを受けて、中国官製メディアは一斉に、若者を「暴徒」と称し、香港政府に「暴徒・暴力を制止するよう」にと強硬な論調を見せた。専門家は、中国当局が民主化を求める学生を武力鎮圧した1989年天安門事件を「香港で再現しようとしている」との見解を示した。米上院では「香港人権・民主主義法案」の早期可決に向けて、議員らが働きかけている。
武力鎮圧
国内ソーシャルメディア「微信(ウィーチャット)」では、中国共産党中央政法委員会が11日、評論記事を発表した。当局は、実弾を発砲した香港警察を「支持する」とし、「暴徒に対して絶対に手を緩めてはならない」「今、発砲しなければ、いつ発砲するのか?」と発砲を正当化した。
中国人の歴史学者、章立凡氏は米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、「中国共産党政権は香港情勢において、一歩も譲らない姿勢だ」と述べた。
章氏は、中国当局が抗議者らの訴えに少しでも歩み寄れば、「政権の崩壊が始まる」と指摘した。「(武力鎮圧という)下策を使ってでも、当局は共産党政権を守っていく」
ロイター通信など各メディアは、中国軍の香港駐留部隊の人数が2倍に増えたと推計している。駐留部隊の駐屯地に、香港警察の制服を着用した治安部隊が目撃され、報道されている。
章氏は、「1989年天安門事件が香港で再現される可能性が高い」と指摘した一方で、「戦車を直接投入するよりも、武装警察や駐留部隊を動員して鎮圧する可能性が大きい」とした。
香港人の時事評論家、桑普氏は、国際社会の制裁を回避したい共産党は目に見える武力鎮圧より、秘密裏に抗議者の拘束・殺害を実行していくだろう」とした。
香港メディア「香港01」13日付は、林鄭月娥長官は警官の人員補てんのため、「公安条例」40条に基づき、志願した消防隊員や入国管理局職員などを「特別任務警察」に任命した。最初の「特別任務警察グループ」はすでに銃や警棒、催涙スプレーなどの装備を支給され、早くも今週内に出動するという。
「香港人権・民主主義法案」採決に大きな進歩
香港警察の実弾発砲、大学キャンパス内での催涙弾やゴム弾使用に、米の大物政治家が相次いで非難した。米上院外交委員会のジム・リッシュ委員長は12日、「国民を残酷に扱っている」と香港政府を批判し、香港政府の対応は「香港基本法と国際条約に違反している」とした。
リッシュ議員は、米政府に対して香港の自治権の状況を毎年検証することを義務付ける「香港人権・民主主義法案」の発案者の1人。
12日、シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の討論会に出席したリッシュ議員は同法案の上院本会議での早期採決に意欲を見せ、「われわれは香港人の味方だ」と強調した。
リッシュ議員によると、上院の与野党100人の議員のうち、現在37人の議員が同法案を支持している。
また、マルコ・ルビオ上院議員は13日、ツイッターでリッシュ議員とともに、ミッチ・マコーネル上院院内総務と会談したことを明らかにし、「今日、法案採決に向けて大きく前進した」と法案の早期成立を示唆した。
ルビオ議員とジム・マガバーン議員が共同代表を務める中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)も14日に声明を発表。香港の自治を破壊すれば、中国政府は「国際金融システムへのアクセス制限、米国および国際社会による新たな制裁という代償を支払わなければならない可能性を考慮すべきだ」と警告した。
ニッキー・ヘイリー元国連大使は12日、FOXニュースの番組に出演した際、香港の抗議活動に言及した。ヘイリー氏は、香港の抗議者への支持を示し、「中国当局は、香港の人々の声を抹殺しようとしている」「香港が陥落すれば、台湾は次の標的になる。米国は香港の抗議デモと中国当局の対応にさらに注目しなければならない」と危機感をあらわにした。
台湾外務省は13日、ヘイリー氏の発言に感謝するとツイッターに投稿した。
蔡英文総統もツイッターで、「法執行は国民を保護するために存在し、政府は国民に奉仕するために存在する。私は国際社会に対し、これらの抑圧行為に対して行動を起こすよう求める」と呼び掛けた。
(翻訳編集・張哲)