デンマークのメディアと政界はこのほど、中国当局による内政の干渉について厳しい目を向けている。きっかけは、中国の駐デンマーク大使が同国自治領のフェロー諸島政府に対して、次世代移動通信規格(5G)通信網に中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の設備を使用するよう強要したと示す録音があったためだ。
デンマーク紙「ポリティケン」と「ベアリングスケ・ティーズネ(Berlingske)」など複数のメディアによれば、馮鉄・中国大使は11月11日、フェロー諸島政府のバールドゥル・ニールセン(Bárður Nielsen)首相と会談した。
地元の「フェロー諸島公共放送(Kringvarp Føroya)」は同月15日、馮大使の訪問について、自治領政府のヘルギー・アブラハムセン(Helgi Abrahamsen)貿易相に取材した。アブラハムセン氏はインタビュー開始前、同省の幹部に11日の会談の詳細について質問した。「『フェロー諸島公共放送』が誤ってやり取りの内容を全部録音した」という。
録音内容によると、11月11日、馮大使とニールセン首相との面会に、デンマークの外務相と財務相も同席した。馮大使は5G通信網に関して、フェロー諸島の通信会社、フェロー・テレ(Føroya Tele)がファーウェイと契約しなければ、「中国はフェロー諸島と自由貿易協定を締結しない」と明言した。
12月2日、フェロー諸島公共放送がこの発言を報道しようとしたが、直前になって地裁に放送を禁止された。ポリティケン紙9日付は、フェロー諸島公共放送の責任者は同禁止令を無視し、今後録音を公表する意向を示したと伝えた。
デンマーク国内では同報道に関して波紋が広がった。デンマーク放送協会 (DR)によると、コペンハーゲン大学軍事研究センターの研究者は、録音内容は中国当局とファーウェイが深くつながっていることを証明したとコメントした。識者らは、「中国当局とビジネスを行う場合、このような問題がこれからも出てくるだろう」と指摘した。
デンマーク政府がフェロー諸島の国防と外交を所管するため、議会の外交政策委員会は12日の審議で、この問題を取り上げた。同委員会委員で前首相のラース・ロッケ・ラスムセン(Lars Løkke Rasmussen)氏は審議後、録音の内容を公開すべきだとメディアに語った。
ヴェンスタ(自由党)と国民党のスポークスマンは、馮大使を批判し、デンマークは中国当局によるフェロー諸島政府への圧力を受け入れられないとした。国民党側は、「中国当局からの圧力を無数回も受けてきた」と話し、「このような人は追放しなければならない」と主張した。
いっぽう、デンマークメディアの報道によれば、同国のイェッペ・コフォズ(Jeppe Kofod)外務相は、ファーウェイを一般的な民間サプライヤーとして扱うべき、5Gの決定権は「自治領政府にある」との見方を示した。
米政府は数年前から、ファーウェイが中国当局の情報機関であると指摘し、同社による国家安全保障上の脅威を警告した。その一方で、ファーウェイは、欧州各国に相次いで進出した。今年6月、フェロー・テレが5G通信網のテストを行い、「フェロー諸島における5G網の技術はデンマーク本土を超えた」とした。
カーラ・サンズ米国駐デンマーク大使はこのニュースリリースについて、他のメディアに寄稿し、「特別な事情が起きれば、全体主義の中国当局は(フェロー諸島における)5Gネットワークを封鎖できる」、自治領政府は「通信インフラ設備の管理権を渡すべきではない」と呼び掛けた。
トランプ米大統領は、12月3日、4日に開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席した際、デンマークを含むNATOの加盟国に対して、5G通信網の整備に関連する中国当局のリスクを警戒すべきだと発言した。
トランプ政権はNATOや欧州連合諸国の政府に、5G技術でファーウェイなど中国製品を使用する場合、機密情報の共有ができなくなると強調している。
(翻訳編集・張哲)