カナダの国会議員らはこのほど、中国の人権問題への取り組みを強化した。12月10日、保守党のサルマ・アトラジャン( Salma Ataullahjan)上院議員は、違法な海外臓器移植を防止するために、前回の議会で提出した法案を再提出した。保守党のタン・ハイ・ヌゴ(Thanh Hai Ngo)上院議員とレオ・ハウサコス(Leo Housakos)上院議員も、マグニツキー法に基づき、中国と香港で起きた人権侵害に関与した中国当局者を制裁するよう、政府に求める上院の動議を提出した。
また、野党保守党が提案した、トルドー政権の対中政策を検証するための特別委員会の設置が、上院議会で承認された。
「刑法、出入国管理及び難民保護法の改正法案(人の臓器の取引)原題『An Act to amend the Criminal Code and the Immigration and Refugee Protection Act (trafficking in human organs)』」と名付けられたアトラジャン上院議員の法案は、カナダ国民が、海外でドナーの同意を得ていない臓器を使用することを違法とする。また、臓器の強制的摘出に関与した海外当局者に対して、カナダへの入国を拒否する。
中国共産党政権は、法輪功学習者、ウイグル人などから臓器を強制的に摘出し、国内外の移植希望患者に使用していることがカナダの人権派弁護士デビット・マタス氏らの調査によって明らかになっている。この臓器供給システムは、政府、軍、病院、司法、公安が系統的に管理している。
保守党のガーネット・ジェニュイス(Garnett Genuis)上院議員は以前、大紀元のインタビューで、世界では臓器移植のために殺されている人がいるとの問題を知り、カナダでもこの問題に対応できる法律成立に尽力していると述べた。議員は関連の報告を確認したうえで、「特に中国では産業化している」と懸念を示した。「(犠牲者が)生きたままの状態で臓器が摘出され、それが他人の移植手術に使われる」。ジェニュイス議員は、この法案可決に力を注いだ議員の一人。
同法案は前回の国会中にも提出され、上下院で満場一致で可決していた。カナダの立法では、下院で修正された議案は再び上院の承認を得る必要がある。国会の解散に伴い、保留になっていた。12月10日の国際人権デーの日から、再び、同法案の承認への動きが再始動した。
今回、保守党のハウサコス上院議員とヌゴ上院議員が作成した別の法案はマグニツキー法の下で、香港デモの抗議者と新疆ウイグル人に人権侵害を働いた中国と香港の政府幹部に制裁を科すよう求めている。カナダ版「マグニツキー法」は2012年に採択された。
ハウサコス議員は大紀元のインタビューで、法案について「基本的な人権と法の基本原則を踏みにじっている、中国と香港の政府指導者の責任を追及するものだ」と述べた。
中国の叢培武駐カナダ大使は、一連の議案が採択されれば、カナダに対して「確かな対抗策を取る」と予告している。
ハウサコス議員は、中国の大使の主張は脅しであるとした。「私たちはG7の国であり、経済的・政治的影響力もある。トルドー首相は立ち上がり、カナダの価値を擁護する時だ」と述べた。
ヌゴ議員は、中国は貿易の中断をほのめかし、まるで「いじめっ子」の振る舞いだが、カナダ政府が法の支配と人権のために姿勢を示すことが重要であると述べた。
昨年12月、カナダは米司法当局の要請を受け、中国IT大手華為技術(ファーウェイ)の最高財務責任者(CFO)孟晩舟氏をバンクーバーで逮捕した後、両国の関係は冷え込んだ。孟氏の逮捕直後、カナダ人2人は中国で逮捕され、今も拘束が続いている。
(翻訳編集・佐渡道世)