米シンクタンク、ミルケン研究所(Milken Institute)の研究員はこのほど、米国と中国のデカップリング(分断)は貿易戦争よりも、中国で発生している新型肺炎のまん延でより進むようになると指摘した。
米CNBCによると、同研究所のアジアフェローであるカーティス・チン(Curtis Chin)氏は2月11日、「われわれは今、中国への依存度による結果を目にしている」と述べ、「企業はサプライチェーンについて、長期的観点から真剣に考えるだろう。貿易戦よりも、新型コロナウイルスによって米中のデカップリングがより一層速く進む」との見解を示した。
2017年以降、米中両国間の貿易摩擦が激化し、相互に追加関税措置を発動した。この影響で、米企業を始めとする各国の企業は、関税措置を回避するために、自国や他国への生産移管を行った。
チン氏は、新型コロナウイルスによる肺炎のまん延で、各国の企業は改めて中国市場への過度な依存による悪影響や、サプライチェーンの多様化の必要性を認識できたとした。
米CNBCは、中国湖北省武漢市を中心に起きた新型肺炎はグローバル・サプライチェーンに大打撃を与えたと指摘。感染拡大を防ぐために、中国当局が都市封鎖措置、交通移動規制、工場の生産操業延期などを実施したためだ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)12日付によると、2月10日、中国各地で企業が操業を再開したにもかかわらず、帰省した従業員が外出・移動規制によって仕事復帰できない状況が続いている。
広東省でバイクの部品を生産する会社の経営者は同紙に対して、「従業員が一人も戻っていない。工場は1カ月以上操業を停止している」と話した。
WSJは「多くの工場が1月下旬の旧正月連休のため休業した。2月10日に再開の予定だったが、今は人手不足とサプライチェーンの寸断に悩まされている」と指摘した。2月10日、上海市の松江工業区では多くの企業が生産活動を停止したままだった。
ウィルバー・ロス米商務長官は1月30日、米ニュースチャンネル、フォックス・ビジネスの番組で、新型コロナウイルスについて「企業がサプライチェーンを見直す際、考慮する1つの要因となった」とし、米企業の米国内への生産回帰の動きが加速するとの見方を示した。
(翻訳編集・張哲)