カナダ外務省の内部文書は、中国がカナダの価値と利益を脅かす「敵」と形容し、中国接近のリスクについて、トルドー政権に警告していたことが明らかになった。文書は、下院の中国問題委員会が公表した。
2019年11月、カナダのマルタ・モーガン外務副大臣(当時)が、外務大臣に就任するフランソワ・フィリップ・シャンパーニュ氏に、専門家の意見をまとめたカナダ外交を概説した報告書を渡した。
報告のなかで、カナダは長い間、中国を重要な経済貿易市場と見なしてきたが「リスクの問題を無視してはならない」としている。これは、中国情報大手・華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長兼財務最高責任者の逮捕に端を発した両国の緊張から、「北京はカナダを罰するために政治、経済の両面から措置を取る用意がある」とした。
報告書は、中国は「競争相手」ではなく「敵」と定義し、中国は経済力の拡大を通じて世界秩序を変化させようとしているとした。たとえば、一帯一路構想およびアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、経済利益を求めるよりも、中国共産党独裁政権のモデルを広げているとした。
この報告書は、中国が国際事務のルールを変えようとしていると指摘した。そして、この動きはカナダの価値に反するとしている。報告書は、政府が「志を同じくする同盟国と密接に協力し、その価値を促進し、擁護しなければならない」と提言している。
報告書の執筆者の一人、アルバータ大学中国研究所の主任研究員マーガレット・マッキューグジョンストン(Margaret McCuaig-Johnston)氏は、カナダの対中政策を見直す必要があると述べた。
同氏は、共産党体制の中国は「国際経済貿易の分野に組み入ろうとしていない。自国の利益のみに関心があり、他国の価値と利益には無関心だ」と批判した。
ジョンストン氏は、現在の自由党トルドー政権は共産党体制の中国と緊密な関係を築こうとしているが、保守的なハーパー前政権時代はそうではなかった、とした。
トルドー政権は2016年に誕生後から、閣僚らは13回訪中した。2017年と2018年にはそれぞれ11回と10回だった。孟氏の逮捕後、両国関係は冷え切った。
カナダのシンクタンク、プローブ・インターナショナルの代表パトリシア・アダムス氏は、自由党はかねてから親中的だと述べた。
「自由党のベテラン政治家は、中国と良好な関係を維持する必要性を強調している。彼らはロビー活動を通じて、中国との関係を維持すれば、カナダにチャイナマネーが流入すると考えている。しかし、一部の自由党メンバーはこの考え方に否定的で、政府内部の意見が分かれているようだ」
(翻訳編集・佐渡道世)