国際人権団体フリーダム・ハウスは3月4日、年次報告書「世界の自由度2020」の中で、世界全体の自由度は低下しているとの分析を示した。中国は、自国民への残酷な弾圧のみならず、他国の選挙と政治に干渉しており、自由度最悪レベル15カ国のうちの一つだと評した。
報告書は国民の政治的権利や社会の自由度などを基準に、195カ国の「自由度」を評価した。その結果、49カ国が「自由ではない」、63カ国が「限定された自由がある」だった。この10年間で、自由な国の割合は3%減少した。日本は100点中96点だった。
2019年では64カ国で国民の政治的権利や自由度の状況が悪化したのに対し、37カ国では状況が改善した。香港は、警察と親中国共産党政府が市民の抗議活動を暴力的に鎮圧したことで、自由度が4ポイント低下した。
中国に関する項目では、共産党政権の専制体制により、ますます抑圧的になっているとした。また、共産党の宗教と人種に対する態度は、「世界で最も過酷な迫害」を実行していると表現した。ポイントは100点中10点で「自由ではない」国に分類された。
ほかにも、中国国内のインターネット検閲と監視はさらに強化されているとした。中国共産党は1989年6月の北京の天安門事件から30周年を迎え、事件に関する議論を抑制し、新たな統制規定を施行した。ソーシャルメディア・プラットフォームにも言論の制限が設けられ、ネットユーザーたちは、政治、社会、宗教に関する滑稽な皮肉の投稿でさえ、アカウントの閉鎖と刑事訴追の危険に追い込まれた。
中国当局はまた、2018年の宗教問題に関する規制に基づき、中国全土の仏教徒、キリスト教徒、ムスリムの宗教的慣行への制限を強化した。加えて、20年あまり続く法輪功への迫害政策も現在まだ続いているとした。
こうした抑圧政策には、最新の人工知能技術と顔認識技術を活用している。
中国政府は国内だけでなく、国外でも民主選挙に関与している。報告は、中国が2020年1月の台湾総統選に虚偽の情報を流し、情勢を混乱させたとのオーストラリアの報道を引用した。過去にも、中国当局は、中国人ビジネスマンをオーストラリア連邦議会選に立候補させるため資金を供給していたことが明らかになっている。
選挙だけではなく、中国共産党による検閲および宣伝活動も、世界に拡大している。報告によれば、スウェーデンの数十社のマスメディアと記者が、中国に批判的なニュースを伝えていたことで、中国大使館から非難されたという。こうした圧力は、在中国ジャーナリストが「報復」に遭う可能性がある。例えば、メディアが「中国経済の衰退」を書けば、記事を撤回しない限り、在中ジャーナリストたちの取材ビザは発給されなくなるという。
フリーダム・ハウスは、世界に影響力を広げる中国共産党政権に対して国際社会の一貫した対応策がないため、状況はますます悪化する恐れがあると分析している。
(翻訳編集・佐渡道世)