中国当局が5月下旬、香港の反体制デモを禁止する「香港国家安全法」の制定方針を決定した後、中国官製メディアが同法への支持を示さなかった企業に対する批判を強めている。一方、香港映画スター、ジャッキー・チェン(成龍)が芸能界で、法整備の早期実現を支持する署名活動を行った。
中国紙・北京日報は6月1日、SNSの微信で記事を掲載し、香港上海銀行(HSBC銀行)を非難した。報道は、香港特別行政区の前長官である梁振英氏の発言を引用して、「(法制定が決まってから)1週間以上過ぎたのに、HSBC銀行はまだ国家安全法について態度を示していない」と指摘した。
また、同紙は「(支持を示さなければ)HSBC銀行は最終的に、すべての顧客を失うだろう」「苦痛を伴う代価を支払ったことに必ず後悔する」などと脅迫した。
記事は、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)をめぐって、HSBC銀行が米政府の調査に協力したことに言及した。米司法省が2016年末以降、ファーウェイが米制裁措置に違反して、イランとの間で通信設備を取引した疑いを捜査してきた。北京日報は、HSBC銀行が「提携先を裏切った」「中国の発展を阻止しようとした」と一方的に責め立てた。
中国共産党機関紙・人民日報の微信公式アカウントはその後、同記事を転載した。
米紙ニューヨーク・タイムズ6月1日付によると、中国系金融機関数社の香港支店の行員は、「『国家安全法』への支持を強いられた」と明かした。香港企業の従業員が同法に公に反対する場合、処分または解雇すると圧力をかけられたと話した。
一方、親中国共産党の俳優、ジャッキー・チェンは、中国当局が「国家安全法」の導入を決定した5月28日当日、香港芸能界で同法への支持を訴える署名活動を発起した。北京日報5月29日付は、ジャッキー・チェン、エリック・ツァン(曽志偉)、アラン・タム(譚詠麟)など著名芸能人を含む2605人と110の関連団体が、共同声明に署名し、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が同法の早期導入を実現するよう求めた。
しかし、同氏が署名リストを偽造した疑いがもたれている。中国版ツイッターの微博で投稿された共同声明の署名には、すでに他界したブルース・リー(李小龍)、アニタ・ムイ(梅艶芳)、レスリー・チャン(張国栄)の名前が書かれていた。
歌手のラム・チアン(蒋志光)、ピアニストのジャクリーン・リー(李巧霊)などは、声明文に署名していない、とフェイスブックなどで抗議した。
(翻訳編集・張哲)