インドネシア当局は、拿捕した中国漁船から、インドネシア人の遺体を見つけたと発表した。遺体は1週間あまり冷凍されていたという。人権団体によると、通報者は姉妹船に乗っていた別のインドネシア人漁船員で、「船長の虐待で死亡した」と報告していた。
2019年11月以来、中国漁船で働くインドネシア人は過酷な労働条件にあると報告されており、これまでに死亡者は8人におよぶ。
リアウ諸島警察のハリー・ゴールデンハート報道官は7月10日、「船内でインドネシアの移民労働者が死亡して、1週間低温室に置かれている」との通報を受けて、マラッカ海峡を航行していた中国船の魯黄元裕117号と魯黄元裕118号を拿捕したと伝えた。
沿岸警備隊が船を捜査したところ、冷凍庫に保管されていた遺体を発見した。魯黄元裕117号には10人のインドネシア人を含む32人が乗り込んでいた。
亡くなった船員はアルフリャンディさん(20)で、 スマトラ島地域の住民だった。インドネシア人船員の権利保護団体(DFW)のモハンマド・アブディ・スフファン(Mohammad Abdi Suhufan)氏は、次のように述べた。
事件は、魯黄元裕117号と並列して漁を行う中国漁船・魯黄元裕118号で働くインドネシア人が、DFWに通報したことから、発覚した。通報者は「中国漁船の船長から胸を強く蹴られ、病を患い、死亡した」と報告していたという。インドネシア海上保安庁は警察、海軍、沿岸警備隊のチームと情報を共有した。
「彼は病気の間、何も食べられず、死の直前にパンと牛乳を受け取った」とDFW団体員は、中国漁船に乗っていた人物の証言を引用して報告した。
インドネシアのレトノ・マルスディ(Retno Marsudi)外相は11日の記者会見で、この事件について報告した。2隻の船に乗船していた21人も、中国漁船を所有する企業による悪質な広告に騙された可能性があると述べた。
DFWとインドネシア当局は以前にも、昨年11月以降、中国漁船に関わるインドネシア人漁船員7人の死亡について懸念を表明した。
6月11日、マルスディ外相は、強制労働など過酷な扱いを受けたとされるインドネシア人乗組員の死亡事故について、中国政府に「透明で公正な」調査を行うよう求めた。
1カ月前、マルスディ外相は、インドネシア人船員の疑惑の虐待を非難し、ジャカルタに中国の大使を召喚した。外相は中国大使に、船員の死体が海に投げ込まれた理由を説明するよう求めた。
外相は5月10日、虐待の疑惑について両国による共同調査を行う予定だと説明した。韓国メディアは、インドネシア人乗組員は2019年12月~3月の間に3人の遺体が海に投げ込まれたと報道した。
それによると、インドネシア人乗組員は30時間も立ちっぱなしで働かされたり、わずかな食事と6時間の睡眠しか与えられなかったりした。また、給与は約束された額よりずっと少なく、月30ドル程度だったという。
さらに最近では、当局者によると、6月5日にマラッカ海峡を航行中に、インドネシア人船員2人が中国籍の漁船から飛び降りた。彼らは海で7時間漂流したのち、救助された。DFWのスフファン氏によると、漁船員たちは身体的に虐待を受け、長時間労働を強いられていたという。
DFWは、こうした過酷労働には人身売買ビジネスが関わっていると疑っている。犯罪集団は、偽の広告で人員を乗船させ、強制労働を強いるという。船員が洋上から逃げることは容易ではない。
(翻訳編集・佐渡道世)