ツイッター上ではこのほど、中国人ネットユーザーが投稿した国営中央テレビ放送(CCTV)の報道映像が注目されている。映像には7月31日、衛星利用測位システム(GPS)「北斗3号」の稼働開始式典で、劉鶴副首相が、李克強首相の面目を失わせる場面があった。
CCTVの報道によれば、同日午前10時半ごろ、人民大会堂で同式典が行われた。最高指導部のメンバー習近平氏、李克強氏、韓正氏のほかに、共産党政治局委員の劉鶴氏、丁薛祥氏などの高官が出席した。劉鶴氏は司会進行を担当した。
映像では、劉鶴氏が最高指導部のメンバーを紹介していた。習近平氏を紹介する際、劉氏は習氏の名前、肩書などを読み上げた後、少し間をとった。この間、習近平氏は席から立ちあがり、出席者に会釈し、一礼して着席した。
これに続き、劉鶴氏は李克強氏の名前と肩書を読み上げたが、間を入れず、すぐ韓正氏の紹介に入った。すでに席から立ち上がっていて、一礼しようとする李克強氏は戸惑いを隠せなかった。会場でも、李氏への拍手が鳴り始め、参加者は拍手を続けるべきかがわからず、気まずい空気が漂った。結局、李氏は慌てて着席した。
この映像について、中国人ネットユーザーの間では、中国最高指導における「権力闘争」が白熱化しているとの見方が多い。「中国共産党政権では、首相でさえ基本的な尊重を得ていないのだから、国民はなおさらだ」と非難する人もいる。
また、ネットユーザーらは、「劉鶴氏が誰かの指示を受けて、公の場で李克強首相に恥をかかせたのではないか」「劉鶴氏が、習近平氏に媚びるために、意図的に李氏の体面を傷つけたのか」とさまざまな憶測を投稿した。
官製メディアであるCCTVがこの映像を編集しないで流したことによって、「習近平氏と李克強氏の対立がオープンになった」との見方もある。
時事評論家の章天亮氏も同様の考えを示した。「李氏がすでに立ち上がっているので、劉鶴氏が礼儀として、他の出席者の名前を読み上げるのを止めるべきだった。CCTVも故意にこの映像を流した」
今年に入ってから、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の感染が拡大する中、最高指導部における権力闘争も熾烈になっている。さまざまな事象から、習近平氏と李克強氏は決裂したとみられる。習近平氏は、李克強氏に中央政府の感染拡大防止本部のトップを任せたにもかかわらず、対外では、習氏は「自身が防疫対策を指示し、自ら指揮している」と公言し、李克強氏のメンツを潰した。
一方、李克強氏は今年5月、国民6億人の平均月収は1000元(約1万5000円)しかないと発言し、国民の半分が未だに貧困に陥っている現状を明らかにした。これは、貧困を脱却し「小康社会を全面的に完成する」と唱える習近平氏の顔に泥を塗ったことになる。また、「地攤(露店)経済」をめぐっても両氏の間に亀裂が入った。
豪州シドニー工科大学の馮崇義教授は、「習氏と李氏の対立、決別はもう避けられない。これで、中国共産党政権の崩壊が加速する」と述べた。
(翻訳編集・張哲)