米政府は、国家安全保障上のリスクがあるとして、中国ネット企業、北京字節跳動科技(バイトダンス)が運営する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を排除する動きを加速している。ティックトック側は、利用者の情報を中国当局に渡すことはないと主張した。しかし、バイトダンスを含む中国IT企業の内部資料では、各社に共産党支部委員会が設置され、党が常にネット上の世論に目を光らせている。
バイトダンスは、ティックトックのほかに、ニュースアプリ「今日頭条」、ミニ動画アプリ「火山小視頻」、動画配信プラットフォーム「西瓜視頻」なども手掛けている。ティックトックと同様に、ほかのアプリなどは海外に進出し、海外バージョンがある。
米国のポンペオ国務長官やナバロ大統領補佐官(通商担当)は公の場で、ティックトックなどの中国ハイテク企業がユーザーの個人情報を中国当局に渡す恐れがあると指摘してきた。
昨年11月、米政府はティックトックの調査へ乗り出した。海外版ティックトックは声明で、当局から利用者の投稿を削除するよう指示を受けたことはないと主張し、「要求されても、従わない」とした。
中国当局が2015年に施行した「国家安全法」、2017年の「国家情報法」と「網絡安全法(サイバーセキュリティ法)」は、ネット上の中国当局にとって不都合な情報の投稿を禁止すると明記している。同時に、すべての企業、組織と個人に対して、当局の情報収集・提供に全面的な協力を要求する。
2018年、中国当局は、体制批判や低俗な投稿があったとして、バイトダンス傘下のお笑いアプリ「内涵段子」を永久に閉鎖した。これを受けて、バイトダンスの創業者で最高経営責任者(CEO)を務める張一鳴氏は、謝罪声明を発表し、今後社内で「党建設を強化していく」「全社員に社会主義の核心価値観を教育する」とし、ユーザーの投稿を検閲するスタッフを6000人から1万人に拡大すると表明した。
中国メディア「光明網」2019年9月14日付によると、中国各地の省・市レベルの170のネット警察当局が一斉にティックトックで公式アカウントを開設した。ティックトックと公安部(省)サイバーセキュリティ保衛局が共同で記念式典を行った。同局の張宏業・副局長は、「ティックトックの強みを借りることで、警察のネット社会統治能力を高める」と述べた。中国警察当局とバイトダンス、ティックトックとの近い関係が見て取れる。
党支部設置
大紀元は情報筋から、バイトダンス、新浪微博、愛奇芸、百度、捜狐などを含む中国ソーシャルメディア企業11社の共産党支部委員会のメンバーリストを入手した。
このリストで、バイトダンス北京本部の党支部委員会には138人委員がいることがわかった。138人のうちの大半は1990年代に生まれた20代の若者で、バイトダンスの経営陣や技術部門の幹部だという。
同社の党支部委員会のトップ、党委員会書記は張輔評氏である。2013年に入党したという。同氏は、ティックトックを含むバイトダンス傘下アプリの検閲業務を主管している。
中国メディア2018年4月の報道によると、張氏は同社で開かれた党員や予備党員の研修会で、「インターネットが、(党にとって)有害な情報やデマなどを広めるためのプラットフォームになってはならない」と話した。
張氏は2019年9月、前述のネット警察のティックトック公式アカウント開設の記念式典で進行役を担当した。
この11社の党支部委員会の委員リストは、共産党が中国の民間ソーシャルメディア企業全体を牛耳り、ネット上の世論を取り締まっていることを改めて浮き彫りにした。
バイトダンスは今年、国内の求人サイト「猎聘」で、ニュースアプリ「今日頭条」の「時事審核編集者(検閲スタッフ)」の求人広告を出した。募集要項には「党員が優先(採用)」と書かれていた。
一方、党支部委員会が設置されているこの中国IT企業11社のうち、バイトダンスを除き、10社は米株式市場に上場している、または上場していた。中国企業が党の支配を受けながら、米の国民や投資家から資金を調達しているという事実も再認識された。バイトダンスは昨年、米株式市場への上場を計画したが、米政府が中国企業の上場規制を強化したため断念した。ロイター通信の報道では、同社は現在、香港市場か上海市場かへの上場を検討している。
トランプ米大統領は3日、ティックトックについて、マイクロソフトあるいは別の米企業への米国事業売却取引で9月15日までに合意が成立しないなら閉鎖させると言明した。
(翻訳編集・張哲)