中国の監視技術企業であるセンスタイム社(SenseTime・商湯科技)は、ヨーロッパ進出のための英国拠点設立計画を断念した。英金融ニュースサイト「This is Money」8月9日付で、情報筋の話として伝えた。
センスタイム社は、ヨーロッパへの進出と英国を本部として使用するためにヨーロッパと交渉しているという。しかし、中国共産党政権によるウイグル人への弾圧を支えたとして米国の制裁対象企業リストに加えられ、欧米諸国ではますます厳格な監視の対象となっているため、計画は全て取り消されたという。
香港を拠点とするセンスタイム社は、世界で最も価値のあるAIスタートアップ企業とみなされ、評価額は60億米ドルにも達し、その技術は顔認識と自動運転に使用されている。
同社は中国の1億7千万台のカメラや警察システムで撮影されたデータを処理しており、その技術が中国の新疆ウイグル自治区の少数民族の追跡や取締りに使われていると非難されて以来、批判を受け続けている。
昨年10月、米国は同社と他の中国のAI企業7社を、ムスリムに対する人権侵害に関与したとし、ブラックリストに追加した。同リストには、杭州海康威視数字技術( ハイクビジョン)社も含まれており、そのシステムは英国の各地の議会でも使用されている。
TikTokもロンドンの本社設置計画を保留
センスタイム社の投資家には、日本の投資大手のSoftBank社と中国のオンラインショッピング大手のアリババらが名を連ねる。
センスタイム社は、香港中文大学の湯曉鷗教授とコンピューターサイエンティストの徐立氏らによって2014年に設立され、先月、プライベート・エクイティ・ファイナンスのラウンドで11億5000万ポンドを調達し、中国への上場を検討していると報じられた。
報道によると、ホワイトハウスの禁止令により、大手機関投資家や投資銀行が米国に制裁される中国企業との取引を避けようとしているため、同社の海外上場は、困難になっているという。
英国の閣僚たちは、中国共産党とその権威主義体制に対して、ますます厳しくなっている。 先月、ジョンソン英首相はこれまでの決定を覆し、中国当局へデータを渡す懸念から、中国の通信大手であるファーウェイを英国の5Gネットワ ークから排除する方針を発表した。
中国サイバーセキュリティ法により、ファーウェイなどのインターネット企業は要請があれば、当局へのデータ提供を義務付けられている。
同社の英国移転計画が明るみに出る前、短編動画共有アプリTikTok社もロンドンに本社を置くことを検討していた。 しかし、同社は顧客データを中国共産党政権と共有したと非難され米国に禁止された。TikTokの英国進出計画は、米国の制裁後の様子見のため保留されていると、先月、英紙デイリー・メールが報じた。
(大紀元日本ウェブ編集部)