中国共産党政府が香港版国家安全維持法(国安法)を施行し、民主と自由の環境を著しく損なわせた。欧米や日本は、一部の制裁的措置を行うのみで、香港問題に強い介入は行わなかった。中国共産党の次の進出標的は台湾であると広く考えられている。米政治学者でスタンフォード大学フーバー研究所の上級研究員ラリー・ダイアモンド(Larry Diamond)氏は、中国共産党の「武力による台湾統一」は単なるハッタリだと考えるのは大きな間違いだ」と警告する。
ダイアモンド氏は先日、フーバー研究所のネットラジオで「中国の挑戦:過去、現在、未来」と題したディスカッションに参加した。
「米国は中国による欧米民主主義の転覆計画の全体像をまとめるのに長い時間がかかった。米国の外交政策やシンクタンクは、今後5~10年の中国共産党の危険性をかなり過小評価している。つまり、中国共産党が言っている『台湾統一』はハッタリではない」と指摘した。
また同氏は、「台湾統一が大げさだと考えるのも、口に出してそう言うのも危険であり、幻想だと思う。香港の問題で明らかになったように、私たちの予想は大きく外れた。中国共産党は香港の自由を着実に、一歩一歩浸食し、そして一気に絞めあげたのではないか」と述べた。
香港に対する欧米の反応は、中国共産党の台湾侵攻を早める可能性があるという。ダイアモンド氏によると、「中国共産党は台湾に対し武力行使しても処罰から逃れられると信じている。なぜならば香港を征服した後、欧米は『無力で、どうすることもできなかった』とみているからだ」という。
また同氏は「中国共産党の軍事現代化の速度と一部の武器の能力を見る限り、彼らがただの脅し文句を言っているだけだとは到底思えない」とし、「必ず台湾を侵略するとは言い切らなくても、間違いなくその準備はしている。この点については疑いの余地はない。今はまだ侵略成功の自信はないのかもしれないが、しかし彼らは毎年目的達成に近づいている。中国と台湾の軍事力の差は年々大きくなってきている。『台湾を侵略しても何の影響もない』という考えは、彼らの内部で受け入れられつつある」ことを指摘した。
元英首相のナチス・ドイツに対する宥和政策は「歴史の教訓」
ダイアモンド氏によると、「中国共産党による台湾の軍事侵攻は、驚くべき速さで起こるだろう。準備をしているし、中国の政治家や軍指導者の間では『欧米は混乱していて虚弱になっている上にやる気もないから、米国は関与しないだろう』と日に日に確信している」という。
欧米の不関与を予想する歴史的事例として、同氏は1930年代の英チェンバレン首相(当時)によるナチス・ヒトラー政権への宥和的政策をあげた。「1937年にチェンバレン氏が、『われわれは平和の時代にいる、ヒトラーが望んでいるのはチェコスロバキアだけ、彼に与えさえすれば良い、私たちは平和を享受し続けられる』と言った事を思い出す。そしてその結果も。あとのことは、皆知ってるだろう」と述べた。
一部の歴史評価では、チェンバレン首相の対ナチス宥和政策はヒトラー台頭と第二次世界大戦につながった、とみなしている。
ダイアモンド氏は、「ジョージ・シュルツ元国務長官がいつも言っていたように、『悪行を抑止する最善の方法は、強力な防御力と抑止力を持つことである』。これこそが米国のシンボルである鷹が片方の爪に矢を、もう片方の爪に枝を持つ理由だ」と説明した。
中国元外交官「対中宥和はもうやめて」
シドニー中国領事館元外交官・陳用林氏は8月7日、大紀元記者の取材に対して「中共は2049年までに『台湾を統一したい』と考えている。これは中国共産党の確立された目標であり、その動きを停止したことはない。「一国二制度」が破綻した今、「台湾の平和統一」の希望は泡のごとく消え去り、今は残された唯一の選択肢は武力だ」と述べた。
陳氏はまた、「中国が台湾を攻撃する能力が高まった今、米台間はその協力ペースを早める必要がある。そして米国の防衛システムに台湾を組み込むべきだ。中国共産党に『台湾を攻撃してもアメリカは無関心か、強い反応を示さない』と誤解されると、彼らは必ず露骨な攻撃を仕掛けてくるだろう」と述べた。
さらに同氏は「鄧小平氏が強調した『韜光養晦』(才能を隠して、内に力を蓄える)という政策を忘れてはならない。これがあと10年か20年続けば、西側は反撃する気力すら持てなくなるだろう」と警告した。
(大紀元日本語ウェブチーム)