マーク・エスパー米国防長官は8月末、ハワイ、パラオ、グアムなどを歴訪し、現地指導者らと会談し、第2次世界大戦終戦75周年記念行事に出席する予定だ。
国防総省報道官は、安全保障上の観点から、長官の旅程の詳細はまだ公開しないという。米軍機関紙・星条旗新聞は、日本メディアの報道を引用して、河野太郎防衛相もグアムで会談する可能性があると報じている。
この歴訪に先駆けて、エスパー長官は米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に寄稿した。インド太平洋諸国の米同盟国やパートナー国に対して、中国人民解放軍により好戦的な行動が続き、安全が脅かされていると指摘した。
米国は、これらのインド太平洋地域の国に対して海洋能力強化の支援に3億9400万ドル(約418億円)近くを提供している。長官は、中国の威圧的行為に脅かされている地域の国々を支援するため合同訓練や演習、作戦、計画策定の強化に繋がるとしている。
エスパー長官は「中国政府の嫌がらせに直面する米同盟国やパートナー国への支持に対する揺るぎない関与を反映する」と表現している。
さらに、寄稿文のなかでもハワイ、パラオ、グアムへの歴訪について言及し、地域の指導者らと直接またはオンラインの会談を通じて、自由で開かれたインド太平洋地域への取り組み、米国の関与の重要性などについて話し合うという。
この3地域について、米軍高官からは監視レーダー施設建設など軍事プロジェクトの必要性が提起されている。2020年はじめ、インド太平洋司令部フィリップ・デービッドソン司令官の報告書「優位性の再獲得(Regain the Advantage)」のなかに示されている。報告によると、インド太平洋軍の能力強化のため、2021~26会計年度の間に約200億ドルの予算を要請している。
また、パラオには多目的レーダーを設置し、予算から1億8500万ドルを支出する。レーダーは長距離の対空および地上を探知し、追跡する能力を備えるものだという。ハワイには、弾道、巡航、極超音速の脅威を探知、追跡、識別、撃退する国土防衛レーダー・システムを設置し、米軍の能力の不足を補う。これに10億ドルを支出する。
さらに、グアムでは360度をカバーする弾道ミサイルシステムであるイージス・アショアを含む「国土防衛ミサイル・システム・グアム」を配備し、17億ドル弱を支出するという。
司令官の報告書は、こうしたハワイ、パラオ、グアムに設置される防衛システムは、日本の千島列島から沖縄、台湾、フィリピン北部、ボルネオまでの群島にいたる列島ラインに沿った精密攻撃網や、分散型戦力態勢の強化に利用されるという。これらの列島ラインは、中国共産党が対米防衛「第一列島線」と表現しているが、米国もまた対中戦略の重要な目安とみている。
太平洋諸国を研究する同志社大学法学研究科・早川理恵子博士は、大紀元の取材に対して、パラオを含む太平洋諸国にはサイバー犯罪、違法操業、マネーロンダリング、麻薬などあらゆる犯罪分野に中国が入り込み、島社会の子供たちが犠牲になっている。エスパー長官の歴訪は、安全保障問題への対応と見ることができると語った。
著書「インド太平洋開拓使:二つの海の交わり」(2020、明成社)を発表したばかりの早川氏は、日本は太平洋地域に積極関与するべきだと提言する。「西太平洋、特にミクロネシア地域は1922年以降は連盟の委任統治、日本領だった。現在でも経済、文化面では日本との関係の方が米国より深い。米軍は参加を日本の関与を求めており、地域において米豪NZ仏英と信頼関係構築に努力すべきだろう」と語った。
中国人民解放軍は共産党の私設軍
中国共産党は8月1日に「軍設立」93周年を迎え、党中央委員会の習近平総書記は、中国軍を海外で党の目標をさらに推進する戦力に転換するよう改めて呼びかけた。
この習近平氏の発言について、長官はWSJへの寄稿文で、中国軍が人民に仕えているのではなく、共産党に仕え、その政治目標を達成するための組織だと批判し、「中国共産党による一方的な国際システムへの野望を実現するためのものだ」と分析した。
エスパー長官は自由、人権、法の支配を重んじる国々に向けて、国家の主権を損なう中国共産主義勢力の攻撃的な行動に対抗するために団結を呼びかけた。
(翻訳編集・佐渡道世)