陝西省西安市ではこのほど、食料の緊急供給所が現れ、ネット上では文化大革命時代の配給制度が再開されるのではないかとの憶測が飛び交った。中国政府は、食料の浪費を根絶する方針を打ち出したばかりだ。
中国は今、洪水、干ばつ、バッタ被害などに見舞われているが、当局は食糧危機には直面していないと強調している。しかし、中国当局が公表したさまざまな情報では、食糧不足の深刻化が浮き彫りになっている。
国営中央テレビ放送(CCTV)は、習近平国家主席が9月1日午後、「中央全面深化改革委員会第15回会議」に出席し、重要な演説を行ったと報道した。同会議では、「食糧安全保障を最優先課題にする必要がある。食糧安全制度の系統を健全化させ、農業の発展方式の転換を加速させなければならない」などと強調した。
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)9月2日付によると、一部の地方政府はすでに、食料不足の対応に取り掛かっている。中国のネット上では、ある地方政府が発行した「糧票(食糧配給切符)」の写真が投稿された。
中国当局は1955年に食糧配給制度を実施し、1993年に撤廃した。当時、「糧票」がなければ、コメや小麦粉などを購入できなかった。糧票のほかに、鶏蛋票(卵配給切符)、猪肉票(豚肉配給切符)、糖票(砂糖配給切符)など、さまざまな配給切符もあった。糧票は過去の計画経済体制の象徴となっている。
RFAによると、投稿された糧票には「中国糧食供応銷售(供給販売)局」「1市斤(500グラム)」と記されている。そのほか、切符には、中国の国旗や毛沢東の肖像画、バーコードとQRコードもあった。スマートフォンでQRコードを読み取ると、「電子糧票の専用電子機器でこのQRコードをお読み取りください」との表示が出たという。
中国国内の専門家はRFAに対して、中国当局が近いうちに配給制度を再開する可能性が高いとの見方を示し、「食糧の配給制度に続き、他の物資の配給制度も違いなく始まる」とした。当局は全国統一の販売を実行するため、来年以降、民間企業への引き締めをさらに強化するとみられる。
中国国家糧食・物資備蓄局の秦玉雲局長は、中国紙・経済日報の取材に応じ、「中国の食糧倉庫の備蓄は充分にあり、もみ米と小麦の2種類の備蓄規模は史上最高で、全国民の1年間の消費量に相当する」と話した。
しかし、その一方で、河南省周口市の市民が投稿した映像では、地元の小麦粉生産工場は、小麦の仕入れが困難で生産が止まった。農家は価格の高騰に備えて小麦を卸さなくなったという。
四川省の市民もRFAに対して、地元で食糧の卸価格が上昇したため、スーパーの米などの販売価格も上がったと話した。
一方、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」では、西安市のある住宅地で「西安市糧食緊急供給所」が突如設けられたとの投稿があった。投稿者は、住宅地付近にコンビニやスーパーなどが多く、なぜこの供給所が設置されたのかと不思議に思った。これに対して、ネットユーザーらは「配給切符で食糧を買うことがまた始まるのでは」と推測した。
微博では8月中旬、国内のある地方の町で撮られた映像が投稿され、波紋を広げている。映像では、住宅の一角に、最近貼られたスローガンが映されている。スローガンには「元の姿に戻ろう。糧票時代を懐かしむ」と書かれていた。中国当局が計画経済体制に戻るシグナルだと、ネットユーザーらは分析した。
(翻訳編集・張哲)