太平洋の島国フィジーで先日、台湾の双十節(建国記念)祝賀行事が行われた。この時、中国大使館職員が立ち入り、退去を求めた台湾駐在所職員に暴力を振るった。中国大使館職員は外交特権を理由にフィジー警察の捜査を拒んでいる。ニュージーランドのメディアが10月19日に明らかにした。
式典は、首都スバにあるグランドパシフィックホテルで開かれた。このイベントに中国大使館職員2人が立ち入り、許可なく会場などを撮影した。台湾駐在所職員は声をかけて退出を求めたが、これを拒否し、職員を殴った。暴力を振るわれた職員は頭部を負傷し、病院に搬送されたという。
フィジーの警察が現場に到着すると、中国大使館の職員は外交特権を理由に捜査を拒否した。しかも、「台湾の職員から暴力を振るわれた」と逆上したという。
ニュージーランドのメディア「アジアパシフィック・レポート」の報道によると、フィジーの台湾駐在事務所は、事件を台北中央政府に報告したものの、表沙汰にしなかった。報道ののち、台湾外務省は19日、事件について中国側に抗議の意を示した。欧江安外務省報道官は、フィジーの中国大使館員の行動は、法の支配と文化的規範に重大な違反を犯していると述べた。
曾厚仁政務次長は、立法院(国会に相当)外交・国防委員会に出席し、中国の非理性的な行動に抗議すると述べた。騒動について公開しなかったのは、事情の確認のためだったと説明した。
台湾のプレスリリースによると、10月8日、首都スバにあるグランドパシフィックホテルで式典は開かれ、台湾駐在代表シンシア・ライ氏らが講演し、フィジーに対する農業や医療などの分野に協力していくと述べた。式典には100人以上の現地要人や国際機関の関係者が出席したと発表されているが、当時発表したプレスリリースには、騒動について書かれていなかった。
フィジーは中国と正式な外交関係を結び、両国はひんぱんに連絡を取っている。2019年、中国政府はフィジーに圧力をかけて、台湾政府の許可なく駐在事務所の名称を「中華民国フィジー貿易使節団」から「フィジー台北商業事務所」に変更した。台湾外務省は非難したが、フィジー政府からは明白な回答が得られていない。
中国フィジー大使館によると、この台湾双十節のレセプションのわずか6日前の10月2日、駐フィジー中国大使である銭波氏は、中国共産党体制による人民共和国の建国を祝う式典を公館で開催し、フィジーのジオジ・コンロテ(Jioji Konrote)大統領、ヴォレンゲ・バイニマラマ(Voreqe Bainimarama)首相、Ratu Epeli Nailatikau議会議長を迎えている。
また、中国大使館は19日に声明を発表し、台湾の建国記念式典は「一つの中国一つの台湾を作り出そうという国際的な動き」であり、「一つの中国」の理論に「重大な違反をしている」と批判した。
アジアパシフィック・レポートの記事を執筆したGrubsheet Feejee氏は過去フィジー政府の主要なコミュニケーション・アドバイザーを務めた、受賞歴のあるジャーナリスト。
同氏は、今回の中国側の動きは、台湾侵略の脅しを含めた世界的な攻撃パターンの一例であると指摘した。「どんなに小さな国であっても、中国の援助がどれほどのものであっても、フィジーでの不法行為を許すことはできないし、許されるべきではない」と書いている。
(翻訳編集・佐渡道世)