トランプ大統領政権において、中国共産党の野心的な拡張主義を制止するインド太平洋戦略は外交上の優位に置かれていた。しかし、民主党のバイデン政権移行チームは、この地域の積極的な対中牽制から距離を置く姿勢を見せている。
バイデン氏は11月11日、日本、オーストラリア、韓国の首脳とそれぞれ電話会談した。
同氏の政権移行チームの公式サイトによれば、インド太平洋地域について日豪韓の各首脳と話し合ったが、これまでの「自由で開かれたインド太平洋、Free and Open Indo-Pacifc、FOIP」との表現を、「安全で繁栄した(Secure and Prosperous)」に変えた。これが政策の方向を変更させることを意味するかどうかは、まだ明らかではない。
韓国青瓦台報道官は12日の記者会見で、バイデン氏と文在寅大統領の電話会談で言及された「インド太平洋」は、トランプ政権の「インド太平洋戦略」ではなく、中国をけん制する意味合いは含まれず、地理的なものに過ぎないとした。
米シンクタンク・ハドソン研究所のジャパン・チェア・フォローの村野将氏はソーシャルサイトで「『自由で開かれた』の場合は価値観や原則志向に聞こえるが、『安全で繁栄した』はより結果重視に聞こえる。いっぽう、菅首相は『自由で開かれた』と継続して呼んでいる」と表現の違いを指摘した。
いっぽう、菅義偉首相は12日、記者団に対して、バイデン氏は電話会談のなか「日米同盟を強化し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて共に取り組んでいくと述べた」と語った。この前日、加藤官房長官は、バイデン氏は沖縄県の尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用対象だと確認していると明らかにした。
バイデン氏と菅首相の電話会談のなかに日米安保条約が言及され、中国共産党政権はすぐさま反発した。中国外交部は「日米安保条約を名目に、日本が米国に支持を求めることに断固反対する」とし、尖閣諸島の領有権を主張する従来の立場を強調した。
バイデン政権移行チームによると、優先課題として4つ、新型コロナウイルス、経済回復、人種平等、気候変動をあげており、対中国政策についての記述はない。これまで、経済、貿易、安全保障の分野で対中強硬姿勢を鮮明にしてきたトランプ大統領政権とは大きく異なる。
インド太平洋地域における中国の地政学的野心に対抗するため、トランプ政権は安倍前首相が提唱した地域の安全保障と外交構想「自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)」に加わり、地域の同盟国および友好国間の戦略的コンセンサスの構築を試みてきた。
米連邦議会では超党派で、拡張する中国への対応が米国外交政策の柱であるとの共通認識だった。超党派下院議員の政策提言組織「チャイナ・タスクフォース」は9月30日、中国共産党がもたらす様々な脅威に対抗するため、400以上の政策を提言する報告を発表している。
11月13日現在、米大統領選と同時に行われた下院(定数435)選挙では、民主党が多数党となり、人事承認や外交で権限を持つ上院(定数100)では、共和党が過半数となる見通しだ。
米国の次期大統領ジョー・バイデン氏が次期政権の候補者の選出を開始し、大統領職への移行を組織化している。いっぽう、トランプ陣営は法廷闘争を続ける構えを示している。さらに、米CNNなどによると、トランプ政権の国務省はバイデン政権移行チームに機密情報の提供を行っていないという。
現在、米大統領選において、少なくとも8件の訴訟と2件の再集計が行われている。大紀元は、再集計や裁判などすべての結果が明らかになるまで、大統領選挙の勝者の発表をしない。
(編集・佐渡道世)