中国学者の翟東昇(てき とうしょう)氏が11月28日、中国上海の討論会で中国当局はウォール街の金融機関を通して、米政府をコントロールしてきたと発言した動画が、米国でも物議を醸した。米メディアが相次いで報道したほか、トランプ大統領や、有力弁護士のシドニー・パウエル氏も、SNS上で動画を転載した。
この動画について、米メディア「デーリー・コーラー(Daily Caller)」は12月8日付の記事で、中国当局はウォール街とワシントンDCの「友人」から構成した「核心勢力」を通して、バイデン氏に影響力を発揮していることは明らかだとの見方を示した。
翟東昇氏は中国指導部の顧問の1人だ。中国人民大学国際関係学院のウェブサイトに掲載されている翟氏のプロフィールによると、同氏は国家発展開発委員会、外交部、統一戦線部、中国共産党中央党校、共産党中央対外宣伝弁公室、軍事科学院などに助言を行っている。
翟氏は、中国当局が過去数十年、米政府をうまく操ることができたのは、ウォール街に中国当局の友人がいるからだと述べた。その友人らが中国当局のために米政府に働きかけたと明かした。
また、1992~2016年まで、米中間に起きたすべての問題が2カ月の間で解決できたのは、「われわれは(米政府の)上層部にコネがあるためだ。つまり、米国の核心的な権力層に昔からの友人がいるからだ」と翟氏は話した。
しかし、トランプ政権が誕生した後、米中貿易戦が始まった。トランプ大統領をうまくコントロールできなくなった。それは「ウォール街がトランプ氏をコントロールできなかったからだ」と翟氏は説明した。
翟氏は、ウォール街と深いつながりを持つバイデン候補が当選すれば、中国当局は再び、ウォール街を通して米政府を動かすことができるようになると示唆した。
また、「皆さんが見ている通り、トランプ氏はバイデン氏の息子が『世界各地にファンドや会社を持っている』と批判している。誰が、彼のために会社を設立したか分かりますか?すべて取引があるのだ。だから、今この時期に、われわれは適切な方法で、善意を示めさないといけない」と中国当局がハンター・バイデン氏の中国事業を後押ししたことをほのめかした。
ハンター・バイデン氏は、中国大手石油会社、中国華信能源(CEFC)などと取引していた。今年9月、米上院で公表された報告書によると、ハンター氏はCEFCから数百万ドルを受け取ったという。
フォックスニュース番組司会者のタッカー・カールソン(Tucker Carlson)氏は12月7日夜の番組で、トランプ大統領の存在は、米国で利益拡大を図る中国にとって妨げとなったことを浮き彫りにした、との見方を示した。
同氏は、翟氏の発言は、米政府内部や報道機関に中国の味方が多くいる「最も確かな証拠である」とした。また、「中国はオバマ前政権を容易に操っていたと示唆した」と述べた。
「これは、なぜ中国政府が米国と米国民のライフスタイルを貶しても、米の政界が無視したのかということの答えだ。これは、中国政府が米国にアヘンなどの薬物を大量に輸出し、数十万人の人が死亡したということの答えでもある。これもまた、中国政府が米企業から数十億ドルの知的財産権を盗んだ時、なぜ米政界が無視していたかの答えだ」とカールソン氏は話した。
同氏はまた、「大企業、IT大手などが、ハンター・バイデン氏の金銭疑惑に関する報道を検閲しているのはなぜだ。彼たちはみんな(中国当局と)繋がっているからだ」と非難した。
米国家防諜安全保障センター(NCSC)トップのウィリアム・エヴァニナ氏は3日、シンクタンクのアスペン研究所(Aspen Institute)のオンライン会議に出席し、中国当局が現在、「バイデン次期政権」に入閣する可能性の高い議員や学者などに接近し、懐柔政策を強化していると警告した。
(翻訳編集・張哲)