北京市に本社を置くデジタル技術企業、玖富数科科技集団有限責任公司(以下は玖富)の本社ビル前で12月7日、同社のP2P融資事業で莫大な損失を被ったとして、中国各地から約4000人の投資家が集まって抗議した。警察当局は、抗議者を殴打し、催涙スプレーなどを使ってデモの鎮圧に乗り出した。一部の抗議者が拘束された。
P2Pとは、オンラインで中小企業や個人である借り手と一般投資家を仲介する融通事業。
2006年に設立した玖富の傘下には、玖富科技や諦易科技などのIT企業のほかに、玖富普恵、悟空理財、玖富銭包などのオンライン金融会社がある。19年8月、玖富は米国株式市場に上場を果たした。
中国メディアは今年8月、玖富普恵と悟空理財の投資者で資金を回収できないと訴える人が増え、両社は破たんする可能性があると報じた。中国当局が2016年に始めた金融セクターの規制強化と景気悪化で、17年以降、P2P業者が相次いで破たんした。
2017年、悟空理財で総額50万元(約793万円)の資金を投じた江西省の住民、呉さんは大紀元に対して、各地の投資家はすでに複数回、玖富の本社前で抗議活動を行ったと語った。
「7日の活動で、私たちはずっと『資金を返せ』と叫んでいた。私たちは政府に陳情してきたが、誰も対応してくれなかった」
中国メディア「界面新聞」8日付によると、玖富普恵だけで、未償還資金は300億元(約4759億円)を上回り、34万人の投資家が損失を被っている。
玖富は7日、傘下の玖富普恵がP2P融資事業から撤退すると発表した。同社は投資家への資金償還について、投資家に3つの案を提示した。
「1つ目の案は、資金総額に応じて投資家にショッピングモールの商品券を提供すること。これは買い物しないと、もらっても意味がない。2つ目は、元本の16%の資金だけを迅速に償還すること。3つ目は、元本と利息を段階的に償還することだが、最長3年かかるという。しかし、3年後、状況がどう変わるかは全く分からない」
呉さんは、3つの案はいずれも、政府と企業がグルになって国民の資産を強奪する目的だと非難し、「それでも、政府はわれわれ投資家を抑圧しようとしている」と怒りを露わにした。呉さんは、「玖富普恵などのプラットフォームは政府の承認を得ており、国営中央テレビ(CCTV)などで広告を出しているため、この会社を信用して投資した。われわれ国民を騙した」と嘆いた。
中国当局は2016年以降、P2P融資事業者に対する規制を強化した。中国メディアによると、11月27日、北京市銀行監督管理委員会の担当者は、ピーク時にあった5000社は全部、同月中旬までに事業を閉鎖したと述べた。
被害を受けた投資家の抗議活動はさらに増えるとみられる。
(記者・李新安、翻訳編集・張哲)