岸信夫防衛相と魏鳳和中国共産党国防相が12月15日、テレビ会談を行い、沖縄県石垣市の尖閣諸島について意見を交わした。尖閣諸島をめぐる両国の論争は続いているが、中国共産党は周恩来首相まで、尖閣は日本に帰属するものとしていた。70年代から「台湾の付属島嶼」として領有権の主張を始めた。
岸防衛相にとって魏鳳和国防相との会談は、9月16日の就任後初めて。防衛省によると、岸氏は、尖閣諸島周辺の日本領海への中国公船の侵入をめぐり、緊迫した状況を引き起こしていることについて懸念を伝えた。
岸防衛相は、尖閣諸島について「歴史上も国際法上も、間違いなく我が国の領土であり、解決すべき主権問題は存在しない」と述べ、中国側に事態をエスカレートさせないよう自制を求めた。
岸防衛相はまた、11月の日中外相会談後の共同記者会見で、「日本漁船が中国の釣魚島海域に入った」とする王毅外相の発言について、日本側は「全く受け入れられない」と強調した。
中国共産党国防部の公式ホームページによると、魏鳳和氏は、東海(日本海の中国呼称)と釣魚島(尖閣諸島の中国呼称)について、双方が「協議を強化して歩み寄る」ことが必要だと述べた。
日中国防大臣はまた、両国の国防当局間の相互連絡体制である「海空連絡メカニズム」の一部である国防官吏向けの「日中防衛当局間ホットライン」の早期開設に向けた調整を進展させることで一致した。
11月以来、中共高官は何度も釣魚島諸島の領有権問題で日本に挑戦してきた。24日に訪日した王毅外相は共同記者会見で、日本側の漁船の一部が「釣魚島の敏感な海域への頻繁な出入りを繰り返し、中国側は必要な対応を迫られている」と述べた。
王毅外相は25日、東京都内のホテルで取材に応じ、「日中両国が公務船以外の船舶を釣魚島周辺海域に入れないように措置すれば、問題は解決するだろう」と語った。
日本側は王外相の発言に強く反発した。加藤勝信官房長官は26日の記者会見で、王外相の発言は「全く受け入れられない」と述べたうえで、尖閣諸島沖での日本漁船の操業に問題はないとの見方を示した。
茂木敏充外相も27日の記者会見で、王毅外相の言葉を容認しないし、尖閣諸島は日本の固有領土だと改めて政府公式見解を強調した。
沖縄県の県議会総務企画委員会は12月15日、王毅外相が日中外相共同記者会見で尖閣諸島(石垣市)の領有権を主張した発言に対する抗議決議案を全会一致で可決した。議案は、同席した茂木外相が王氏の発言に反論しなかったことについての批判を含めている。
日中国防大臣のテレビ会議が行われた12月14日にも、尖閣諸島の領海外側にある接続水域では、中国の海洋警察船4隻が航行している。中国公船が同海域に入ったのは今年で22回目。八重山日報によると、4隻は機関砲のようなものを搭載した「海警1303」「海警1301」「海警2502」「海警14603」だという。
11月14日、岸防衛相は就任したばかりのクリストファー・ミラー米国防長官代行と電話会談を実施した際、東シナ海・南シナ海をはじめとするインド太平洋地域の情勢について意見交換を行なった。
尖閣は政治材料
中共が最近、釣魚島の領有権を強く主張するようになったのは、中共政権の安定のためだと、在米評論家の李林一氏は大紀元の取材に答えた。「中共は本気で自分たちの領土と主権を守っているわけではない」とし、習近平政権は民族主義を利用して釣魚島における強固な態度を示していると述べた。
コラムニストの唐靖遠氏は、中共は過去の事例にならい、国内外での危機に直面した時は国境紛争を引き起こす可能性が非常に高まるとみている。釣魚島周辺で小さな摩擦を引き起こし、それによって「中共が主権のために戦った政権だ」と吹聴し、政権維持の求心力を集めるという。
中国の過去の資料によれば、中共政権が50年代に、釣魚島は日本の領土との認識を示していた。
1951年8月15日、当時の周恩来首相はサンフランシスコ平和会議開催を批判する声明で、琉球群島(釣魚島を含む7組の島嶼)と小笠原諸島を含む「これらの島嶼の日本分離につき、過去のいかなる国際協定も規定していない」と明言した。1958年3月26日付の中共機関紙・人民日報は、社説「恥知らずな捏造」もこの発言を引用した。
社説はまた、当時の中共外交部報道官の話として、いわゆる「中国は琉球諸島に対する主権を絶対に放棄しない」という情報は、米国人によって捏造されたものだと書いている。
人民日報は1953年1月8日付の「アメリカの占領に反対する琉球諸島の人々の闘争」と題する記事で、「琉球人民の反米闘争は、日本人民の独立、民主、平和を勝ち取るための闘争と切り離せないものである」と強調している。
その後、中共は釣魚島の領有権を主張しなかった。日中友好条約締結のために、周恩来と鄧小平は二度にわたり、釣魚島問題を棚上げした。しかし、1968年に国連アジア極東経済委員会による調査で、尖閣諸島を含む東シナ海に、石油が埋蔵されているとの報告が出ると、中共は領有権を主張し始めた。これは海上保安大学校の亀田晃尚氏の2018年3月の論文で指摘された。
1971年12月22日に沖縄返還協定が国会で可決すると、その8日後の30日、中国外交部(外務省)は声明で、尖閣諸島は「台湾の付属島嶼であり、古くから中国領土の不可分の一部」とし、返還協定で尖閣諸島が返還区域に組み入れられたことを「主権侵犯」として反発した。
同年12月30日の官製ラジオ・北京放送は、「1970年11月、日本反動派は蒋介石と結託して、島嶼領有権論争を棚上げさせて、先に協力開発を行うとし、海底石油を略奪しようとした」と放送したという。これは、日台韓による東シナ海大陸棚資源の共同開発合意について指していると、亀田氏はみている。
2008年6月18日、親中派の福田康夫政権の日本は、「東シナ海を平和・協力・友好の海」とするため、中国との石油・ガス田開発を共同する東シナ海合意「2008年6月合意」を結んだ。合意内容によると、中国は日本側が主張する「東シナ海中間線」を「共同開発区」とし、この中間線は釣魚島諸島を日本に編入している。
しかし、この「共同開発の合意」は、現実には中国による一方的な開発行為が進んでいるとして、日本政府は開発中止を求めている。外務省は2020年9月、日中中間線が画定していないなか、中国側が東シナ海で一方的な開発行為を進めていることは極めて遺憾だとの声明を発表した。
外務省の声明によると、中国は、日中の地理的中間線の中国側で、これまでに計16基の構造物を確認している。
(佐渡道世)