米拠点シンクタンク・国際政策センター(Center For Global Policy、CGP)の調査によると、中国政府の強制労働により、少なくとも57万人のウイグル人が新疆地方の綿花収穫に従事している。
CGPの報告書を執筆した米ワシントン拠点「共産主義犠牲者祈念財団」エイドリアン・ゼンツ(Adrian Zenz)上級研究員によると、新疆ウイグル自治区における綿花収集の労働人口は、毎年、数十万人が強制的に動員される。
彼らは通常、厳重に管理された鉄道やバスなどの方法で集団移送される。綿花畑では警察官が監視する。報告書によると、労働人員には子どもや高齢者も含まれる。
当局の労働監督チームは、労働者が「安定した」精神状態にあるかどうかを確認し、定期的に政治的な洗脳を行っているという。
数十万人という動員数は、中国政府の公文書や報道から算出した。ゼンツ氏は、綿花収穫の動員には、地域の強制収容所にいる人々も含まれると考えている。「新疆の強制労働は経済的な理由だけではない。主な目標は、少数民族の規模を縮小させることにある」と、ゼンツ氏は書いている。
国連食糧農業機関(FAO)の2018年のデータによると、中国は世界最大の綿生産国で世界全体の25%を占める。強制労働を背景にした新疆綿の問題は、アパレル業界をはじめグローバルチェーンに広く関わっている。
報告について、英政府は「新疆ウイグル自治区内や中国の他の地域におけるウイグル人の強制労働の指摘には信憑性がある。英政府にとっても深刻な問題だ」と、ナイジェル・アダムス外相は議会で語った。
「英国の企業は、これらの憂慮すべき現実に目を向けなければならない」と、ビジネス・エネルギー・産業戦略省の委員会委員ナス・ガニ議員は述べた。
米国では、新疆綿を取り扱う中国企業に経済制裁を行っている。米国の税関国境取締局は12月2日、中国最大の綿生産者の一つである新疆生産建設兵団(XPCC) からの綿製品の輸入を禁止した。財務省も2020年7月、XPCCにドル取引禁止など金融制裁を課している。
ロイター通信が2020年10月、綿の原産地について、アパレル小売など主要10社を取材した。原産地情報を開示したのは無印良品「MUJI」のブランドで知られる良品計画と、プーマだけだった。良品計画は、新疆綿を利用していたことを認めた。
中国当局は、少数民族に対する強制収容をめぐり国際社会から非難を受けている。複数の国際人権団体は2018年までに、少なくとも100万人以上のウイグル族イスラム教徒が新疆の再教育収容所に収容され、洗脳や拷問を受けていると報告した。さらに、労働人員として中国各地の工場に移送されているという。
ゼンツ氏は10月、英議会の公聴会で、新疆の2つの地区では2015~18年にかけて、人口の自然増は84%も減少したと述べた。さらに、2020年、ある地域ではウイグル族の出生率はほとんどゼロだったと報告した。
新疆全域に収容所様式の建物が380カ所以上あることが、衛星写真の分析によりわかっている。オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)研究者ネイサン・ルザー(Nathan Ruser)氏は2017年以降に新設または大幅に拡張された再教育収容所、拘置所、刑務所を地図化した報告書を2018年から複数回にわたりオンラインで発表している。
(翻訳編集・佐渡道世)