米ワシントン拠点の非営利の倫理監視団体は12月23日、米アップルは中国のアプリストアから、中国共産党が好まないテーマを扱うアプリを削除しているとの調査報告を発表した。報告は、アップルが中国市場を維持するために自己検閲を行っていると指摘している。
非営利団体「説明責任のための運動(Campaign for Accountability、CfA)」の関連組織である「透明性ある技術(Technology Transparency Project、TTP)」による調査報告によると、アップルの中国アプリストアでは、他国では見つかるアプリ3257個が発見できず、行方不明になっている。
これらのアプリの3分の1にあたる964件は、法輪功、チベット仏教、香港の民主運動、台湾、チベット、プライバシー保護、デジタル暗号通貨、VPN、ソーシャルメディア、海外メディアなど、すべては中国共産党が国内で検閲する情報と関連しているという。
アップルは以前、中国政府の要請で「中国の法律に違反する」特定のアプリを取り下げることがあると明らかにした。同社は、これらの大部分は「ポルノ」や「ギャンブル」のアプリだと説明していた。しかし、今回のTTPの調査で、中国のアプリストアで行方不明になったこの2分野にあたるアプリは157個に過ぎず、全体の5%にも満たないことがわかった。
アップルは年に2回「透明性レポート」を発表し、各国政府の要請で同社が取り下げたアプリの数を公開する。
しかし、TTPの報告は、アップルは「中国のアプリストアから自主的に取り下げたアプリを公開しない」とした。実際にアップルが取り下げたアプリの数は、公式発表よりもはるかに多いとみている。
「TTPにより検証された約1000のアプリは、中国で検閲されることが多い政治的に敏感な話題を取り上げていた。アップルが積極的にアプリをブロックしている可能性を示唆している」と報告書には書かれている。
アップルの透明性レポートによると、同社は2018年7月から2019年6月にかけて、中国政府の要請を受けて805個のアプリを削除した。
アップルの透明性レポートが示した95カ国のうち、10カ国は同じ時期にアプリの削除をアップルに要請したが、中国ほど広範囲に渡りアプリの削除を要求し、さらにアップルが対応した国はないという。取り下げ要請があったアプリの数では、アラブ首長国連邦は275個で、中国に次いで多かった。しかし、アップルは、そのうちの1個しか削除しなかった。
世界の巨大IT企業の一つであるアップルは、しばしば、中国政府の情報検閲に加担しているとして批判の声があがる。今年9月、アップルは人権ポリシーを公開し、「情報が自由に流れるオープンな社会の構築」に取り組むとの企業の姿勢を強調した。しかし、同ポリシーでは中国について言及しなかった。
アップルは中国を大型市場とみなし、サプライチェーンの多くを中国に依存している。アップルは最近、中国企業のアプリ「微信(WeChat)」と「ティックトック(TikTok)」を、米国から禁止しようとする米政府の取り組みに対して反対を表明した。
CfAのエグゼクティブディレクターであるMichelle Kuppersmith氏は、「アップルが中国市場で競争するために、検閲への反対姿勢を軟化させているのであれば、その決定について透明性を示すべきだ」と指摘している。
2月に開かれた株主総会では、中国当局によるアプリの削除に反対する株主提案が否決された。しかし、株主の40%は「アップルは表現の自由を人権として公的に尊重しているかを報告すべき」という株主提案を支持している。
(翻訳編集・佐渡道世)