中共ウイルス(新型コロナウイルス)PCR検査キットを世界的に販売し、コロナ特需を得た世界最大のゲノム技術企業「深セン華大基因科技有限公司(華大基因、BGI)」は、中国人民解放軍と共に幅広く研究を行っている。さらに、コロナ禍初期には日本にもPCR検査キットを供給している。しかしBGIは以前、米国安全保障当局から中国政府との強い繋がりを指摘されており、海外の遺伝子データを収集して悪用する可能性があると警告されている。
コロナ禍に乗じて展開
BGIは、中共ウイルスの世界的な流行で、PCR検査キットを日本、米国、オーストラリア、インド、欧州諸国、サウジアラビアなど、少なくとも26カ国に販売してきた。そして18カ国に58カ所の検査施設を建設した。また、各地の中国大使館を通じて、寄贈キャンペーンも展開した。
BGIは2020年2月、日本の国立感染症研究所に対して検査キットを寄贈している。キットの詳細について大紀元は取材を申し込んだが、同所から回答は得られなかった。BGIは公式説明で、日本の64の大学、20の研究機関と取引していると公表している。また、神戸の都市計画である神戸医療産業都市にも加わり、日本貿易振興機構(JETRO)の協力を経て2011年9月に日本初の拠点となるBGI Japan株式会社を立ち上げた。
BGIはコロナ特需企業として知られている。1月27日、BGIは2020年12月期本決算の業績予測を発表した。純利益が前年比7.2~8.3倍の20億~23億元(約322億~370億円)に達し、売上高は前年比3倍の82億~86億元になるとの見通しを示した。
バイオテクノロジーの悪用
2020年7月、米国はウイグル族などに対する強制労働、もしくは抑圧目的での遺伝情報の収集・分析に関与しているとして、BGIを取引規制対象リストに追加した。ブルームバーグによると、米政府当局者はBGIを「遺伝子分野のファーウェイ」とみなしている。また、イスラエルやサウジアラビアなど中東の同盟国がBGIと検査契約を締結していることを米国は注視しており、要人らの遺伝子情報が中国政府に渡ると警告している。
トランプ政権の国家防諜安全保障センター長官だったウィリアム・エバニナ氏は、1月31日放送の米CBSの報道番組「60ミニッツ」に出演し、BGIがワシントンやニューヨーク、カリフォルニアなどの州で中共ウイルスのPCR検査センターの建設と運営を申し出ていたと語った。エバニナ氏は、中国が外国で収集・分析した遺伝子データを悪用する可能性があると米研究機関に警告を発したという。
BGIは科学専門誌やウェブサイト上で、世界各国の医療研究者に対し、同社の機器で得られたウイルス関連データや陽性者の検体を同社に送付し、中国政府が出資する国家遺伝子バンクを通じて共有するよう呼びかけている。
遺伝子技術を軍事利用
米政府と議会に政策を助言する「人工知能(AI)に関する技術産業委員会」は2020年10月、中間報告を発表した。議長を務めるグーグルの元最高経営責任者(CEO)エリック・シュミット氏は、中国のバイオテクノロジーと中国人民解放軍の動きについて警鐘を鳴らした。
同委員会は、中国はAIを用いて特定の集団の遺伝子学的弱点の特定や、病原体の遺伝情報操作、兵士の精神力や体力を向上させるための遺伝子研究を行っていると指摘した。委員会はバイデン政権にも引き継がれ、今年3月に最終報告書を提出する予定だ。
BGIは、中共ウイルスのPCR検査キットが軍事利用されるとの指摘を否定し、「COVID-19テストキットに関連して、人民解放軍との繋がりに関するいかなる非難も強く拒否する」と声明で述べた。さらに、同社は開かれた科学やデータ共有といった規則や、ゲノム研究に関する国際基準および中国国内法律を遵守しており、軍事研究者との協力は学術目的に限られると強調した。
ロイター通信1月30日付の報道によると、中国語と英語で記された文書と研究論文を調査したところ、BGIと人民解放軍は、ゲノム検査から脳科学に至るまで数多くの共同研究を行っていることが明らかになった。共同研究の具体例として、BGIは漢民族が高山病にかかりにくくするための軍事プロジェクトに取り組んでいる。これは、高山部の国境地域の兵士を利する遺伝子研究だという。
新米国安全保障センター(CNAS)の技術および安全保障プログラム上級研究員で中国軍事に詳しいエルザ・カニア氏は、ロイター通信の取材に対し、中国軍は脳科学、遺伝子編集、人工ゲノムの作成など、将来的には生物兵器に応用できる研究を推進していると語った。いっぽう、カニア氏はこうした生物兵器は今のところ技術的に実現可能ではないと付け加えた。
これらの報道は、中国共産党政権が進める、民間技術を軍事技術に転用する「軍民融合」政策の実践に関する最新の証拠といえる。
2017年9月、軍民融合に関する第13次5カ年特別計画が承認された。ここでは、中国の技術開発のなかで、生物工学の優先的な発展が定められている。同年、国防大学が出版した2017年版「戦略学」には、「軍事闘争の領域としての生物学」との項目が加わり、「特定の民族への遺伝的攻撃」など生物工学を戦争に活用する可能性について言及している。
(翻訳編集・佐渡道世)