村民全員に一軒家や自動車を給付する「中国一の金持ち村」で名を知られている中国江蘇省華西村は近年、凋落の一途をたどっている。2月24日から、村営複合企業、江蘇華西集団公司(以下は華西集団)の経営状況を懸念した村民は、出資金を取り戻すため、返却手続きが行われる村の指定場所に殺到していたことがわかった。
中国メディア「封面新聞」などによれば、華西集団は24日、出資者への資金返却を行った。同社は出資金の配当率について契約当時30%と約束した。しかし、返却日の当日、配当率は実際に0.5%であることが浮き彫りになった。
1人の村民は封面新聞に対して、配当率の引き下げを当日初めて知らされたと訴えた。同村民によると、高配当のため、多くの村民は、1年や3年の契約で、華西集団に出資していた。配当率の急減を知った他の村民は24日から、資金返却手続きが行われる村の広場に押し寄せ、雨の中で長い列をつくった。同社は、配当率の大幅減について説明を行っていないという。多くの村民は、元本だけでも良いから資金を取り戻したいと話した。
封面新聞によると、別の村民は「騙された」と憤った。
華西村党委員会の担当者は、「外部からの資金が満期となったため、返済を行った」と説明した上、同社の「資金は十分にある」と強調し、村民が懸念する資金難を否定した。
中国メディア「中国経営報」は2019年3月、華西集団の資金難について独自報道を行った。報道によると、江蘇省江陰市当局は、華西集団の「流動性困難」に関して市幹部らを召集し対策会議を開いた。
公開資料では、2018年に華西集団の総資産は約548億元で、負債が約370億元だった。負債率は約67%。
華西集団は208社の子会社を持ち、鉄鋼、化学、アパレル、金融など各分野に進出している。そのうち、江蘇華西村股份有限公司は1999年、深セン証券取引所で新規上場を果たした。中国国内で初めて、村の名前を冠した企業が上場となった。中国当局はこれまで、華西集団について「全国郷鎮企業中の先進企業」などと称賛し、2020年に同村を「社会主義新農村建設の模範」と位置づけ、大々的に宣伝した。
華西村の村民委員会は華西集団の株式99.9%を保有し、実質的な経営権を握っている。
華西集団の設立を主導したのは呉仁宝・前村党委員会書記だ。2013年に同氏が亡くなった後、息子の呉協恩氏が村党委員会書記に任命され、華西集団の会長を務めた。呉仁宝氏の他の3人の息子と1人の娘も、華西集団の幹部や子会社の社長を務めている。
米国に亡命した中央党校の蔡霞・元教授は28日、ツイッター上で「本質から言えば、華西村は中国共産党政権の縮図だ。中央政治局常務委員会(最高指導部)の前職と現職の常務委員は、率先して資産を公開する勇気があるだろうか?」と呉氏一族の資産状況に疑問を投げかけた。
復旦大学の周怡教授は、2004年の調査報告書で、呉仁宝氏の息子4人は華西村の総資産の90.7%を支配していると指摘した。当時、村民の月収は1000元(約1万5000円)程度だった。
(翻訳編集・張哲)