中国当局はこのほど、新疆問題などをめぐって欧米各国との対立を強めている。産経新聞社の矢板明夫・台湾支局長は、中国当局が現在、好戦的な「戦狼外交」ではなく、各国に噛みつく「ゾンビ外交」を展開していると非難した。
過去10日間、中国当局と欧米各国の間で非難の応酬が繰り広げられている。
18日、米中外交トップの間で行われた会談の中国当局側の冒頭で、中国の楊潔篪国務委員は、新疆や香港、チベットでの人権問題を提起しようとする米国側を猛烈に糾弾した。
これに先立ち、米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官は16日に訪日し、日米の外交・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)に出席した。その後、閣僚4人がそろって開いた記者会見で、茂木外相は、「中国による既存の国際秩序に合致しない行動は、日米同盟と国際社会にさまざまな課題を提起しているとの認識で一致した」と述べ、中国当局を名指しで批判した。
これを受けて、中国外務省の趙立堅副報道局長は、日本は「自ら進んで米国の顔色をうかがい、戦略的属国になっている」「(米国という)オオカミを家に引き込んだ」などと非難した。
22日、欧州連合(EU)、米国、英国、カナダがウイグル人の人権を侵害したとして、中国当局者らへの制裁措置を発表した。中国側も即座に対抗措置をとり、欧州議会の議員や一部の学者に制裁を科した。同日以降、オランダ、フランス、ドイツなど欧州各国は、中国大使を召喚し中国側の制裁に抗議した。
また、フランス外務省はこのほど、在仏中国大使館が同国の台湾政策に批判的なフランス人学者を「チンピラ」と非難したことに関しても、中国大使に抗議したと報じられた。
24日、米国の中国語テレビ放送「新唐人」のニュース番組に出演した矢板明夫氏は、中国当局の好戦的な外交姿勢に関して、「中国の今の外交姿勢は戦狼外交ではない。全身が硬直していて、意思疎通が難しく、手当たり次第に人に噛みつくというゾンビ外交だ」と厳しい言葉で批判を浴びせた。
矢板氏によると、中国当局の外交トップである楊潔篪氏と王毅外相は、中国の対外姿勢において飴と鞭の関係である。楊氏は外国政府に対して、常にニコニコしていて優しい人に扮している一方で、王氏は外国政府を罵る悪役を担当していた。「今回の米中会談で、楊潔篪氏のイメージが大きく変わった」と矢板氏は話した。
「楊氏は今回の会談を通して、米国が作った国際秩序と米国の価値観を受け入れないとのメッセージをはっきりと送った」
矢板氏は、「鄧小平は敵国を作らない韜光養晦という外交戦略を提唱していた。楊潔篪氏はその戦略に忠実に従ってきた。今回、楊氏がスマイルを見せず強硬な態度で会談に臨んだのは、明らかに習近平指導部からの指示だとわかる」と述べた。同氏は、習近平政権が鄧小平の「韜光養晦」路線を放棄し、米国に対抗していくことを決めたと分析した。
また、矢板氏は、楊潔篪氏が米中会談の冒頭で17分間米国を非難し続けたことは、国内の若い民族主義者に向けたパフォーマンスだとの見方を示した。
EUがこのほど、中国当局者らに制裁を科したことは「1989年天安門事件以来、初めてのことだ」と矢板氏は指摘し、今後、国際情勢が大きく変わる可能性が高いとした。
同番組に出演した香港人時事評論家、桑普氏は、米国の前職と現職の国務長官に対して楊潔篪氏が違う対応をしていることを指摘した。
「楊氏はポンペオ前国務長官と会談した時、お辞儀をしたりして礼儀正しく振舞っていた。今のブリンケン国務長官と会うと、楊氏は『米国には上から中国に物を言う資格はない。中国はその手は食わない』などと相手を責めていた。明らかに、中国当局は米国のバイデン政権を見くびっている」
(翻訳編集・張哲)