中国共産党政権は2003年から「教育文化の海外進出」政策を打ち出し、海外で大学の現地校の設置を推進している。現在、北京語言大学など3大学が文部科学省の指定を受け日本校を運営している。「中国語教育の普及」と謳う孔子学院も同政策の一環であるため、各大学の日本校は孔子学院との繋がりも深い。
教育という名の下で、中国共産党政権の浸透工作は確実に日本で進んでいる。
「あくまでも外国の大学」
文部科学省のホームページによると、同省の指定を受けた中国の大学の日本校には、天津中医薬大学中薬学院日本校(06年9月開校、兵庫県神戸市中央区)、北京語言大学東京校(15年4月開校、東京都豊島区池袋)、上海大学東京校(19年6月開校、東京都新宿区)がある。
文科省の説明によれば、これらの大学の日本校はあくまでも「外国の大学」として位置付けられており、国から補助金を交付していない。外国の大学は日本校を自由に設置できるが、文科省の指定を受けると、日本での進学が可能になる。また、在籍する留学生は在留資格を認められるようになる。
現在、アメリカ、カナダ、中国などの大学・大学院は11の日本校を開設している。他国の大学とは違い、中国の大学はすべて国営大学で、中国共産党の利益のために運営される政府機関である。中国共産党は海外では、開かれた学術環境を利用し、共産主義イデオロギーを広めている。
孔子学院と深い関係
3大学の日本校のうち、孔子学院を設置したのは天津中医薬大学中薬学院の日本校。同学院は神戸東洋医療学院の協力を得て、2006年に開校した。その2年後、「神戸東洋医療学院 孔子課堂(クラス)」を設立した。中国語だけでなく「中国伝統医学」の一般向け授業も行っている。
中国教育部直属の重点大学の初の日本分校を15年に設置した北京語言大学は現在、北陸大学と関西外国語大学と提携し、孔子学院を運営している。東京校は孔子学院を設置していないものの、同大の日本における孔子学院の事業に深く関わっている。
同大の孔子学院事業部の記事によると、東京校の共同運営者であるISIグローバル(東京都池袋)が16年7月、「孔子学院本部と国家漢語国際普及指導チーム弁公室の協力を得て」北陸大学と日本人向けの中国語教師の養成プログラムを実施した。北京語言大学の幹部らも来日し、養成プログラムを視察した。
記事によると、プログラム終了後、「北京語言大学はISIグローバルの責任者と意見交換し、複数の合意に達した」という。なかには中国語教育を日本の学校教育システムに組み入れること、漢学研究の充実を図る「孔子新漢学計画」の実施などが含まれている。
ISIグローバルは1977年に設立され、留学の斡旋、日本語教育、専門学校を運営している。1995年から北京外国語大学・北京語言大学と業務提携している。現在、語学留学の斡旋のほか、北京大学医学部とも提携し、医学生の留学をサポートしている。
ソフトパワーの拡大による浸透工作
中国共産党政権は近年、国際社会から発言権を獲得できるよう、ソフトパワーによる他国社会への浸透工作に力を入れている。孔子学院はその象徴的な存在となっている。
孔子学院は中国語教育の普及を名目にした「統一戦線工作」によって、中国共産党の主張に基づいたプロパガンダを行っている。
2010 年、当時の中国中央宣伝部長であった劉雲山氏は、人民日報に対し、中国の海外での宣伝は「包括的で、多階層的で、広範囲でなければならない。我が国の主権と安全に影響を及ぼす主要な事案については、チベット、新疆、台湾、人権、法輪功などの事案に対し、積極的に宣伝戦を繰り広げなければならない。我々の戦略は、積極的に我々の文化を海外にもっていくことである。私たちは海外の文化センターと孔子学院をうまく設立しなければならない」と述べた。
神戸に派遣された孔子学院の中国人講師が2019年12月、北京語言大学のホームページに次の記事を発表した。中国にマイナスなイメージを持つ日本人受講生に「中国は日本よりも進んでいる」と伝えるなどして、「海外にいても、共産党員としての役割を果たしたい」と説明している。
相次ぐ閉鎖の動き
近年、その活動目的が問題視されるようになり、欧米では孔子学院の閉鎖が進んでいる。昨年8月、当時の米トランプ政権は国内の学院を統括するワシントンの「孔子学院米国センター」を大使館や領事館と同様の外国公館に指定すると発表した。2019年会計年度の米国防権限法(18年8月)は国防総省に対し、孔子学院を設立する大学への資金支援の停止を求める条項を盛り込んでいる。
孔子学院は日中の大学間の取り組みで、設置や認可の届け出は必要ない。日本では現在、18カ所設置されているが、閉鎖の動きはまだない。
文科省は大紀元の取材に対して、外国大学日本校の設置後、文科省はその活動を審査することはないと述べた。
(李沐恩)