今、永田町では、人権外交を推進する力強い流れが形成されつつある。4月6日、「人権外交を超党派で考える議員連盟」の設立総会が衆議院議員会館で開かれた。中国共産党政権による人権弾圧を「国際社会に対する脅威」と捉え、弾圧を即時停止するよう求める国会決議を出すべきとの決議文を発出した。さらに、欧米諸国では「標準装備」となっている「マグニツキー法」の制定を求める動きも活発化している。
「人権外交を超党派で考える議員連盟」で副会長を務める松原仁・衆議院議員は長年、人権問題に取り組んできた。人権弾圧を行っている中国共産党幹部に対し米国が制裁を科したのを受けて、松原議員は政府に質問主意書を提出し、中国の人権問題について政府の見解を尋ねた。
米国の制裁対象となった中国共産党幹部は上陸拒否すべき
松原仁議員は3月23日、人権侵害の加担者として米国の制裁対象となった中国共産党幹部について、日本への上陸を拒否すべきか否かを問う質問主意書を提出した。
松原議員は主意書のなかで、「日本国憲法の前文にあるように、われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認しているのであって、このなかにウイグル人やチベット人、香港人、モンゴル人、民主派、法輪功学習者、地下キリスト教徒など中国共産党に迫害されている人々が含まれることは言うまでもない」と記した。
このうえで、米国が指定した、制裁対象の中国共産党幹部らが日本上陸した場合、「人権侵害に利用する目的で監視用機器等を調達することが強く懸念される。実際に、ウイグル人への人権侵害に関与したとして米国が制裁対象に指定した中国企業が、我が国の大手企業と取引していると報道されている」と指摘した。
松原議員は、米国の制裁対象者は出入国管理及び難民認定法に基づき、弾圧に加担した中国共産党幹部の「本邦への上陸を拒否すべきと考える」として、政府の見解を尋ねた。
政府は、松原議員が指摘する「米国の制裁対象者」の「具体的に意味するところが必ずしも明らかではない」としつつ、上陸拒否等の措置については「個別具体の事情に即して判断する必要がある」と返答した。
中国共産党幹部に金融制裁を
同じく米国が中国共産党幹部に金融制裁を科したことを受け、松原議員は2月12日、「中国共産党幹部等への米国金融制裁適用に関する質問主意書」を提出した。
松原議員は、「香港国家安全維持法に違反した容疑で、米国人弁護士ジョン・クランシー氏や立法会前議員を含む50人以上が警察に一斉逮捕された本年1月6日の事件を受け」、米国が「6人の中国共産党幹部と香港警察当局者を新たに制裁対象に指定すると発表した」と指摘。
そして、金融庁は「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」に基づき、「顧客及びその実質的支配者の氏名と関係当局による制裁リスト等とを照合するなど、国内外の制裁に係る法規制等の遵守その他必要な措置を講ずるよう金融機関に求めている」と記した。
これらを踏まえ、松原議員は次の2点を質問した。
(一)政府は、我が国の金融機関に対し、米国の金融制裁対象となった中国共産党幹部等と取引することがないよう、法人の顧客についてその実質的支配者は誰かを調査し、正確に把握することを求めているか。
(二)政府は、我が国の金融機関に対し、個人の顧客についてどのような人物で、どのような取引目的を有しているか、資金の流れはどうなっているかなどの情報を調査し、把握することを求めているか。
これに対し、政府は中国共産党幹部に対する具体的な対策に言及することを避けた。金融庁が作成した「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」に基づく本人確認を金融機関が行うことは必要不可欠であり、必要に応じて顧客から書類の提出を求めるべきである、という一般論を述べるにとどめた。
(王文亮)