ハンガリーの首都ブダペストでは5日、数千人の市民が集まり、中国・復旦大学の分校キャンパス建設計画に抗議した。一部の市民は、「反逆罪」と書かれたプラカードを掲げ、オルバン・ビクトル(Orban Viktor)現政権を批判した。いっぽう、同国政府はこのほど、欧州連合(EU)の中国に向けた非難声明に拒否権を行使した。
オルバン政権は4月、復旦大学との間で、2024年までにブダペストで同大学のキャンパスを設置することで合意した。同キャンパスは復旦大学初の海外分校となる。また、ハンガリーも、EU加盟国27カ国の中で、中国の大学の分校を設置する最初の国となる。
ハンガリー側が建設費の一部を負担すると報じられた。キャンパス設置に反対する市民や政治家らは、オルバン政権が中国当局の機嫌を取ろうとしていると非難すると同時に、中国の大学の分校建設によってハンガリーの高等教育の質が低下し、ハンガリーおよびEUにおける中国の影響力がさらに拡大すると懸念する。
ロイター通信6日付によると、5日の抗議活動に参加した22歳の大学生は、「わが国と中国との間で、封建的な(feudal)関係が強化されることに反対だ」と述べた。大学生は、政府資金は「国内の大学などの施設を改善することに使うべきで、中国の大学を作るために出すべきではない」と主張した。
野党の政治家やエコノミストは、キャンパス建設プロジェクトのコストが高く、透明性に欠けると批判している。
反対者の1人であるブダペストのカラーチョニ・ゲルゲイ(Karacsony Gergely)市長は2日、キャンパス予定地周辺の道路名を「自由な香港通り」「ダライ・ラマ通り」などに変え、政府に対抗した。市長は5月、「現政権が中国共産党のイデオロギーを代表する大学の進出を許した。これによってハンガリーの納税者が数十億フォリントの損失を受けた」と発言した。また、市長は、復旦大学の運営方針を示す規約が「中国共産党の世界観を表している」として、同キャンパス建設計画には「重大な国家安全保障リスクがある」と強調した。
復旦大学は2019年、規約を改正し、「思想の自由」「真理の探究」などを削除し、「中国共産党」「社会主義」などのイデオロギー教育に関する内容を大幅に加えた。新規約は、「中国共産党の指導を堅持する」と主張した。
ロイター通信は、オルバン政権は中国などの反自由主義政府と友好的な関係を築き、科学研究や司法、メディアの独立性を抑制しており、欧米各国と対立していると批判した。
EUの対中非難声明を阻む
オルバン政権は4日、EUによる中国の香港政策に対する非難声明の発表を妨害したことがわかった。
ドイツのミゲル・ベルガー(Miguel Berger)外務次官は同日、ツイッター上で「ハンガリーが再び、香港に関するEUの声明発表を阻止した。(中略)これによって、EUの外交および安全保障政策はブロッキングポリシー(Blocking policy)に基づいて機能できない。適格多数決を含む反対意見を管理する方法について真剣に議論する必要がある」と書き込んだ。
EUでは以前から、現行の「一票否決制度」に対する不満があった。国際問題に関して、加盟27カ国が全会一致しなければ、EUの決定が採択されることはなかった。
ハンガリーは4月にも、中国当局の「香港国家安全維持法(国安法)」をめぐるEUの非難声明について反対票を出した。また、5月、ハンガリーは、EUの他の26カ国とともにイスラエルとパレスチナに停戦を呼び掛ける声明の発表を拒否した。
ロイター通信5日付によれば、ハンガリー政府のメディア担当者は、中国に対するEUの制裁は「無意味で、身の程知らずで、有害である」「EUは今まで、中国と香港について多くの宣言を出したが、成功したものはない」とした。
ハンガリーは3月、EUが新疆ウイグル自治区の人権侵害に関わった中国当局者4人らに、制裁措置を科す決断を支持した。
(翻訳編集・張哲)