米プロバスケットボール選手のジェフ・ハーパー(Jeff Harper)氏は昨年、過失致死の疑いで中国当局に8カ月間にわたり軟禁された。「指定住居居住監視」という措置を受けた同氏は外部と隔離され、自身がどこにいるか分からなかったという。米紙ウォール ・ストリート・ジャーナル(WSJ)は22日、同氏の事例を取り上げ、「居住監視」の実態を明かした。
昨年1月、中国のファーストフード店に行ったハーパー氏は、あるカップルが激しく争う場面に遭遇し、男性を押しのけたところ、死なせてしまった。中国当局はハーパー氏を正式には逮捕しなかったが、悪臭を放つマットレスとプラスチック製の椅子しかない部屋に軟禁し、「居住監視」に処した。
中国では正式逮捕の前に、容疑者を尋問するために「居住監視」と呼ばれる勾留措置がある。
ハーパー氏はその間、自身の居場所を知らされず、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の大流行も知らなかった。交際相手が携帯電話のGPS機能を利用し、同氏の所在を突き止めた後、同氏は米領事館員と面会が許された。「祈りと運動を頼りに辛い日々を乗り切った」という。
スペインのマドリードに本部を置く人権団体「セーフガード・ ディフェンダーズ(Safeguard Defenders)」によれば、2020年の中国の公開裁判記録に記録された「居住監視」のケースは約5810件もあり、昨年の同時期に比べて91%も増加したという。実際の数はもっと多いとしている。
同人権団体は「居住監視」を受けた容疑者が時には暴力を受けることもあり、恐ろしい状況だと表現した。
WSJによれば、昨年、スパイ罪で正式に起訴されたカナダ国籍の元外交官マイケル・コブリグ(Michael Kovrig)と実業家マイケル・ スペーバー(Michael Spavor)両氏も、かつて当局の「居住監視」を受けていたという。
しかし、この処置を適用された人権弁護士や法輪功学習者、地下教会のキリスト教徒らは、その所在がほとんど知られていない。
「セーフガード・ ディフェンダーズ」が入手した証拠によると、一部の被拘束者は時には殴られたり蹴られたりすることもあるという。
同NGOが入手した「被居住監視者向けの英語のパンフレット」には、「寝る時は仰向け、両腕は常に毛布から出すこと」などの指示が書かれていたという。
ハーパー氏の場合、当局による扱いは「そこそこ礼儀正しい」としたが、時には虫の入ったご飯を食べさせられることがある。身柄を拘束されている間に約18キロも体重が減ったという。
アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチなどの国際人権NGOは「居住監視」に関する多くのケースを記録している。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ2009年の報告によれば、中国当局は政府の建物、ホテル、旅館、療養院、精神病院、薬物リハビリセンター、住宅ビルなどを居住監視や闇の収容施設に使用しているという。
中国当局は最終的にハーパー氏の「過失致死」を追及しない方針を決定した。同氏は2020年9月に中国からの出国を許可された。
WSJによれば、ハーパー氏のように、「居住監視」下にある一部の被拘束者は釈放されることもあるが、中国人の被拘束者のほとんどは有罪判決を下された。「居住監視」は何年も続く場合もあるという。
米国務省は昨年7月、中国在住の米国人、および中国に渡航する米国人に対し、恣意的に逮捕され、長時間の取り調べや、国家安全の名目で拘束が延長される恐れがあると警告した。
最新のデータによれば、2013年以降、「居住監視」の被害者は約6万人近くいるという。
(翻訳編集・李凌)