「憑依」という現象は、東洋だけではなく、西洋の文化にも見られます。『聖書』には、イエスが憑依した悪鬼を追い出すという物語がいくつかあります。
ある少年が口がきけない悪鬼に憑依されていました。悪鬼は少年の肉体を苦しめ、彼を殺そうとして火や水に投げ込み、しばしば彼を痙攣させたり、口から泡を吹かせたりしていました。イエスはその悪鬼を叱責し、少年の体から出てくるように命じました。悪鬼は抵抗できず、奮闘し、怒鳴り、ついに少年の体から離れてきました。
聖書の物語の中で、イエスは悪鬼に憑かれた人のために悪鬼を追い出すことが何度もありました。イエスは12人の弟子を連れて、ガダラ人の地に着きました。イエスが舟から降りると、悪霊に憑かれた人が、墓から出てきました。その人は行動が非常に異常でした。夜も晝も、絶えず墓や山にて叫び、石で自分を攻撃しました。憑依した悪鬼が強すぎるため、足枷や鉄の鎖を使ってその人を何度も縛っても、鎖を壊して足枷を壊してしまいました。人々はもう耐えられなくなっていましたが、悪鬼を縛ることもできず、誰もどうしようもありませんでした。
この悪鬼に憑かれた人がイエスと12人の弟子に必死に走ってくるのを見て、弟子たちは恐怖を感じ、皆震えていました。しかし驚いたことに、その人は皆の前に駆け寄り、突然ひざまずき、イエスに懇願しました。人間の目では分かりませんが、悪鬼はイエスが聖者であり、使命を持った人である事がわかっていたのです。
イエスは悪鬼らに、その人の体から出てくるように命じました。 悪鬼らは、「私たちはあなたとは何の関係もありません」とイエスに言いました。悪鬼らは、イエスが干渉しないことを望んでいました。 イエスは神の力を使って悪鬼らを豚の群れに追いやりました。その結果、2000匹の豚は全員、崖から飛び降りて海に身を投げて死んでしまいました。
その後、一部の芸術家はこれらの物語をモデルにして、壁画『ガダラの豚』を創作しました。 中世の有名な羊皮の絵『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』にも、 イエスは悪鬼を追い出した物語が描かれています。
「憑依」という現象の存在により、様々な信仰文化の中で、悪魔祓いを担当する専門の人員や魔道士が登場しました。その結果、悪魔祓いをテーマにした映画やテレビ番組が制作されるようになりました。信仰の欠如や道徳の低下した時代、恐怖感と視聴率を重視するあまり、ますます多くの悪魔祓いの映画やテレビが取り上げられ、悪魔祓いというテーマが低俗で下品なものになっています。しかし、ロシアには、『孤独の島』(『Остров』別名『聖者の島』)という優れた映画があり、そこでは伝統的な信仰と理念の下で悪魔祓いが描かれています。
(翻訳編集・啓凡)