洪水、台風、地震が頻繁に発生する群島国家の日本では、歴史的に自然災害が大きな課題となっている。そのため、自衛隊(JSDF)が国内の人道支援・災害救援(HADR)任務のために平均で年間200回以上出動する。
日本国際問題研究所(JIIA)の上級研究員を務める明海大学の小谷哲男教授はFORUMに対して、「自衛隊は1950年代から災害救援活動に関与している」とし、「しかし、1995年に発生した『阪神・淡路大震災』が転機となった。6,000人以上の死者が発生した同震災では、大規模な救済・救援活動が必要であった。
この経験により、公式には自衛隊の二次的任務とされていた災害救援を一次的任務と位置付けるべきであることが判明した」と説明している。
自然災害の発生頻度と被害の深刻度の高まりに伴い、日本政府は国家安保に対する重要性を鋭敏に理解した上で、人道支援・災害救援の活動強化に向けて自衛隊の編成と訓練を実施するようになった。
防衛省によると、陸上自衛隊(JGSDF)隊員は捜索救助任務、遭難船や遭難航空機の援助、洪水管理、医療提供、疫病予防、給水支援、要員と物資の輸送に従事し、海上自衛隊(JMSDF)も日本や他諸国で同様の活動に関与する。陸自と海自共に人道支援・災害救援活動のために毎年200回以上出動する。
朝日新聞の報道では、保養地・観光地として知られる熱海の河川で2021年7月上旬に発生した「伊豆山土砂災害」の大規模な土石流により100棟の家屋が半壊・全壊し、20人以上の死者が発生した際も陸自が現場に派遣された。同災害では警官、消防士、海上保安官も救済・復旧活動に従事している。
1年前に九州で集中豪雨による洪水などの災害が発生した際は、捜索救助活動のために4万人超に上る陸自隊員、海上保安官、消防士が出動した。 災害救援活動において重要な役割を果たしてはいるものの、自衛隊員は第一対応者ではないと説明した小谷教授は、「最初に対応するのは警官、海上保安官、消防士であり、主な責任は中央政府ではなく地方自治体が担う」とし、「地方自治体が自衛隊の派遣を要請した場合にのみ自衛隊は出動して災害救援活動を実施することができる」と述べている。
防衛省の報告によると、日本は1987年以来国際的な災害救援要請にも応じている。最近の活動としては、2015年のネパール地震発生時の国際緊急援助、2019年にジブチで発生した豪雨・洪水被害に対する緊急援助、2020年の大規模なオーストラリア森林火災時の緊急援助などが挙げられる。
日本史上最大級の災害救助展開は、「東北地方太平洋沖地震」に伴う津波により福島県双葉郡大熊町・双葉町に立地する福島第一原子力発電所で深刻な原子力事故が発生した2011年の活動である。18万人に上る自衛隊員と緊急援助隊員が派遣され、米国はロナルド・レーガン(USS Ronald Reagan)空母打撃群と第3海兵遠征軍などを派遣して協力救助作戦を展開した。
小谷教授は、「災害対応活動はある意味実際の戦闘に似ている」とし、「発砲こそしないものの、水陸両用作戦、輸送、通信、兵站など、すべてが戦闘作戦と非常によく似た指揮統制で動く。そのため、国内の災害対応活動や国際的な緊急援助活動への関与により日本の能力を実証することで、近隣諸国に対して当国の力強い姿勢を示すことができる」と説明している。
(Indo-Pacific Defence Forum)