【大紀元日本9月8日】今年4月から中国各地に広がっている電力不足が7、8月のピーク時でさらに深刻さを増した。南方電網公司(CSG)がこのほど発表したデータによると、同社が送電を管轄する雲南省、貴州省、広西チワン族自治区、広東省、海南省の5省で、深刻な電力不足が続き、8月に入ってから、電力需要に対する供給の不足分は全体の15%に達し、広西チワン族自治区と貴州省では20%以上の電力不足を記録した。これは過去5年で最悪の状況だという。
電力不足の原因について、南方電網は水不足と石炭不足にあるとしているが、専門家はその根本には「市場石炭・政府電気」、つまり、石炭価格は市場によって決まるが、電力の卸価格は政府が決めるという矛盾した状況があると指摘する。
電力不足の実態
南方5省の電力供給は、水力発電3割、火力発電7割でまかなわれているとされる。水力発電に関しては、貴州の烏江流域、広西の紅水河流域、雲南の瀾滄江流域に水力発電所が集中している。5日付の北京商報の報道によれば、烏江流域と紅水河流域の水量は、干ばつのため例年より8~9割減っている。現在この2大流域のエネルギー賦存量は、前年同期比85%減の25億キロワットとなっている。南方電網が管轄する区域内における水力発電機の総容量は5627万キロワットだったが、8月の平均出力は2000万キロワットに止まっている。
一方の火力発電は、「発電機の停止点検や石炭不足、石炭品質の問題など」により、供給能力の2割以上は利用されていないという。国内ニュースサイト・中新網によると、南方電網の管轄区域内で、石炭不足により600万キロワット分の発電機が停止しており、450万キロワットの電力は石炭の品質問題のため、出力されていない。
一方、電気に対する需要は年々増えている。8月の5省の電気需要量は前年同期比11.5%増であり、うち広東省は8.1%、広西チワン族自治区は16.5%、貴州省は20.5%、雲南省は22.8%、とそれぞれ前の年より大幅にアップしている。
電力不足は「体制の問題」
電力不足をもたらした石炭不足や発電機の停止点検の裏には、石炭業界と発電業界が自らの利益を確保するために、けん制し合う「体制の問題」が存在する、と中国の発展・改革委員会(発改委)の史煒主任は指摘する(北京商報)。国有の石炭企業は炭鉱事故防止のため、小型炭鉱の閉鎖に踏み込んでいるが、生産量を増やすような工夫を講じていない。一方、発電企業は、石炭企業と利益を競い、現在の電力不足の現状を顧みずに発電機を停止させている。「中国には電力不足は存在しない。存在しているのは、発電業界の恥知らずの発電停止行為と、石炭業界の良心なき利益至上行為だ」と史主任は痛烈に批判し、国有企業への優遇策を制限するよう提案した。
しかし、史主任が指摘する「体制の問題」より、根本的な体制問題は「市場石炭・政府電気」の矛盾にある。つまり、石炭価格は市場によって決まるが、電力の卸価格は国(発改委)が決めるという状況。市場の働きにより石炭価格が上昇すると、発電会社は稼働すればするほど赤字が増える状態に陥り、発電能力があっても発電を控えざるを得ない。発改委の史主任が責めた「体制の問題」はむしろ発改委自身にあった。
南方5省以外でも、同じひずみが生じている。6日、中国の三分の一の石炭埋蔵量を誇る山西省では、13の火力発電所が同省電力協会に対して「石炭価格の高騰で、発電所の赤字が増え、新たに石炭を購入する資金がない」といった内容の連名書簡を提出した。中国電力企業聯合会のまとめによると、2011年1~7月の5大発電会社(華能・大唐・華電・国電・中電投)の火力発電事業は合計180.9億元の損失を記録している。
経済学者の茅於軾教授はこの問題について、「電力と石炭市場の自由化が問題解決の唯一の糸口だ」と指摘する。中国エネルギー研究会の周大地副理事長も、電力価格を開放し、発電業界の市場化に伴い、電力販売も市場化すべきだと主張している。