中国人民銀行(中央銀行)は17日、一部の銀行に対して預金準備率を1%引き下げると発表した。2年ぶりに大幅な引き下げで、今月25日から実施される。対象は大手商業銀行や株式制商業銀行、都市と農村部の商業銀行、外国銀行。準備率は現在、大手商業銀行向けが17%となっている。
発表によると、銀行預金準備率の引き下げで浮いた資金の大半は、中期貸出制度(MLF)を通じて人民銀による市中銀行向け貸し出しの返済に充てられる。残額の約4000億元(約6兆8440億円)は、都市部や農村部の商業銀行に供給される。
人民銀は今回の措置について、金融システムの安定的な流動性を確保し、資金調達難の中小企業の資金調達コストを下げるなど融資環境改善のためだと説明した。
香港金融専門家の廖仕明氏は、現在中国金融市場では流動性がひっ迫していることが背景にあると指摘した。「企業の資金調達難、金融商品の投資資金の不足、資本流入の減少などが原因で、中央銀行がその措置に踏み切ったのだろう」
廖氏は大幅な準備率の引き下げで、対ドルでの人民元急落や資金流出など、実体経済にとって一部のマイナス的な影響が生じるとの見解を示した。
一部の専門家は、中国当局の準備率引き下げと資金供給は、米中貿易摩擦をめぐって中国当局の金融的対抗措置だとの認識を示している。
しかし、香港中文大学の荘太量・副教授は、「一部の銀行を対象に絞った準備率の引き下げであるため、米中貿易摩擦の対抗措置とは考えにくい」とした。
廖仕明氏も「国内の金融リスクを緩和する措置だ」と同様な考えを示した。
一方、香港にある投資銀行、大和証券キャピタルマーケッツ(日本を除く)の賴志文・チーフエコノミストは、人民銀行の預金準備率引き下げは中国国内マクロ経済の悪化と、最近、中国マネーサプライ(M2)伸び率の低下と関係がある、と指摘した。
人民銀は現在「中立的な金融政策」を維持するとしている。賴氏は「一部の銀行に対する準備率引き下げを通じて、当局は今後、金融政策をやや緩和的に行うとのシグナルを送った。これによって、経済の下振れリスクを軽減していく」と分析した。
(記者・梁珍、翻訳編集・張哲)