政府拉致問題対策本部は、主催する北朝鮮拉致問題を啓発する作文コンクールの2020年度受賞者作品集を2月12日、オンラインで公開した。参加した中高生の作品は「拉致は日朝の問題ではなくグローバルな問題だ」「傍観者から一歩踏み出そう」など問題解決へ向けた力強いメッセージが込められている。
この全国の中高生を対象にした啓発作文コンクールは、拉致問題関連の学習と理解を深めることを図る政府の取り組みの一つ。2020年度は4069点の作品が寄せられ、審査の結果、最優秀賞3点、優秀賞4点、特別賞6点の入賞者が決定した。入選発表は12月12日に東京都で行われた。
作品発表について、政府拉致問題対策本部は、政府の総力を挙げた努力に加えて「日本国民が心を一つにして、すべての拉致被害者の1日も早い帰国実現への強い意志を示すことが重要」であり「拉致問題に触れる機会の少ない世代への啓発は課題」と説明している。
入賞作品は、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会・横田拓也事務局長や法務省、外務省、文部科学省からの最終審査委員により選ばれた。
コンクール参加者は、新潟県で拉致被害にあった横田めぐみさんの事例を取り上げたアニメ短編映画「めぐみ」などの映像作品や関連書籍を通じて問題を学習している。受賞作品は、「北朝鮮による日本人拉致問題は人権侵害であり、許されることではない。人権とは、すべての人々が生命と自由を確保し幸福を追求する権利であり、拉致はその権利を無視している」「当たり前にある幸せをありがたいと思える人になりたい」と、人権や家族などの角度から拉致問題に関する考えを表現している。
2017年から始まったこの作文コンクールは、2020年度に初めて、「拉致問題に関して英語での発信力を備えた人材の育成を促すこと」を目的として、英語エッセイ部門が新設された。同部門の最優秀作品は「北朝鮮による拉致問題を『グローバルな問題』として認識し、同国への国際的圧力を一層強め、北朝鮮の指導者に人権侵害の解決を迫ることができる」と記述した。
北朝鮮工作員による日本人拉致は、1970年代から80年代に発生した。日本政府は17人を拉致被害者として認定しているが、他にも拉致の可能性を排除できないケースが多数ある。
(佐渡道世)