【大紀元日本11月10日】「朝起きたら、庭には金で折った紙飛行機がいっぱい転がっていた。これはまさに神の世界のような話だ」。中国当局に1500万元(約1億8千万円)の追徴課税と罰金が課せられた著名な芸術家艾未未氏は、ドイツの国家ラジオ局「ドイチェ・ヴェレ」の取材で、多くの市民から支援を受けている感動の秘話を語った。同氏の事務所には、現金を自ら届けにくる支援者が長蛇の列を作っており、7日の早朝だけで、776枚の送金通知が郵送されてきたという。
艾氏は近年、メラミン入り毒粉ミルク事件や四川大地震で多数の児童生徒を死なせた手抜き校舎建設問題の調査に乗り出すなどの一連の行動から、中国政府に目の敵にされていた。そして今年4月、当局は脱税の罪で同氏を逮捕。国際社会の圧力により6月に仮釈放したが、1日、北京市の税務当局は同氏に対して、1500万元の追徴課税と罰金を15日間以内に支払うよう命じた。一日遅延すると、20万元(約240万円)の滞納金が発生するという。同氏は脱税の罪は事実無根であり、自身の反政府言論への報復であるとコメントした。
短期間で巨額な金を工面しなければならない艾氏のために、全国の人々が立ち上がった。3日、インターネットで支援者は「艾未未さんに金を貸そう」と呼びかけ、艾氏自身も中国版ツイッター「微博」で借りたお金を必ず返すと明言した。
支援者団体の公表によると、SOSが出されてから6日後の9日正午までに、全国各地の2.4万人が艾未未氏宛てに送金し、総額660万元に達した。
支援者の中には、先月の年金という人もいれば、人生初めてもらった給料という人もいる、また、自分の7ヶ月の子供からの貸付金という人もおり、大多数の人はお金は返さなくていいと言っているという。「私たちは自ら参加し、自らの金銭を提示することで、あなたに支持票を投じている。我々の心の中に蓄積してきたこの政権への鬱憤を晴らす機会がないところに、あなたは代弁してくださった」というコメントもあった。
一方、支援者団体によると、中国政府は一部の送金者の情報を突き止めて圧力を講じ始めている。
政府系メディア・環球時報は7日、艾未未氏には「違法な資金集めの疑いがもたれている」という報道を出した。インターネットではこの報道に関する批判コメントが殺到したため、すぐに取り下げられたもよう。
艾未未氏に金を貸した中国のフリーライター殷徳義さんはドイチェ・ヴェレの取材に対して、次のように語った。「私には希望が見えた。人々が内心から中国の独裁政権に反抗していることの現われだ。中国にとって大きな前進である、もちろん、街頭に出て抗議するまでには、まだまだ道のりは長い」
艾未未氏自身は、「当局は私に様々な罪を考案してきたが、実際にはその必要性はない。自由な発言が私の罪であり、公民の権利を守ることが私の罪であるからだ。これは明らかな事実だ。そのほかの罪を捻出することはとても愚かだ」「中共政権が私にどんな罪を着せるかは、すでに重要ではない。(国民による)正義の審判では、すでに結論が下されているのだ」と語った。
山東省臨沂市でも体制に異議を唱える人を支持する輪が広がっている。
数年前に、山東省臨沂市の地方政府が「一人っ子政策」違反の理由で、中絶と避妊手術を強制する違法な政策を執行し、数千人の女性が被害を受けた。このことを上級機関に陳情しようとする地元住民に、盲目の人権弁護士・陳光誠氏は法的援助を提供していた。
この一件が引き金となり、2005年9月から、陳氏は外部との連絡を遮断されたまま地元政府に自宅軟禁されて、2006年8月、山東省の中級人民法院は、財物損壊罪と交通秩序撹乱(かくらん)罪で同氏に懲役4年3カ月の刑を言い渡した。刑務所内では、陳氏は酷いリンチを受け、一時健康状況が非常に悪化したが、治療を受けられなかったため、いまでも慢性腸炎に苦しんでいるという。
2010年10月に刑期満了で陳氏は釈放されたが、現在も当局の厳しい監視下に置かれ、自宅軟禁の状態が続いている。
このような状況において、中国全国各地から、陳氏を励ますために自宅に訪れ見舞う人が後を絶たない。現地の臨沂市政府は厳しい封鎖網を敷き、見舞う者を恐喝し続けているが、依然として大勢の人が団体で訪れている。そして、当局に身柄拘束され取り調べを受けて釈放された後でも、様々なルートで自分たちの体験を公表し続けている。
チベット人も立ち上がる
6日、四川省カンゼ・チベット族自治州のニンツォ・ゴンバ(霊雀寺)で、1万人を超えるチベット人が集まり、3日に焼身自殺をはかったばかりのチベット人尼僧を追悼する集会を開いた。今年3月以来、中国共産党のチベット政策に抗議するため、すでにチベット人僧侶9人と尼僧2人が焼身自殺をはかった。 そのうちの6人は死亡、残りの5人は当局に連行され行方不明である。
米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、当局は寺院付近とカンゼ地区に大量の警官を配備し、寺院を包囲していた。このような状況下で、参加者らはスローガンを叫び、国内チベット人の悲惨な状況を世界中に周知させるよう海外に亡命したチベット人に呼びかけた。また中国政府に、チベットに対する高圧的な政策を変えるよう訴えたという。
艾未未氏を支援する1人は次のように語った。「(艾未未氏に)お金を貸すという行動について、参加者の多くは、これは中国政府の人権弾圧への抗争と認識している」。この抗争は今、全国的に広がりを見せている。