【大紀元日本6月19日】10日に発表された、香港の高度な自治を確約した「一国二制度」を脅かす中央政府の「香港白書」。1週間が経った今、「白書」は江沢民派が習近平体制を窮地に追い込むために仕掛けたもの、との見方が出ている。
それについて、専門家らの分析をまとめた。
*香港の管轄権は江沢民派にある
今回の白書の発表元は、「国務院新聞弁公室及中国共産党中央対外宣伝弁公室」。
国内専門家の話では、国務院に設置されている同弁公室は組織上、中国共産党中央宣伝部と国務院の二重管轄を受けているが、実質上、前者に支配されている。江沢民派が主導する同宣伝部は、胡・温政権時代から、両指導者をけん制する武器としてよく使われたという。
一方、香港を主管する中央政府の最高機関は「中央港澳工作協調チーム」(以下・港澳チーム)。そのトップの張徳江(全人代常務委員会委員長)も江沢民派のメンバーである。
いわば従来から、香港やマカオの管轄権は実質上江沢民派が握っている。
*一国二制度に対する習主席と李首相の姿勢
習近平国家主席は昨年3月、香港のトップ梁振英長官との会見の際、「中央政府の香港、マカオに対する方針、政策は変わらない」と明言した。白書が、習主席のこの姿勢と矛盾しているのは明らかである。
16日から英国訪問中の李克強首相。17日に発表された両国の共同声明は、国際社会が注目している同白書に触れることなく、「一国二制度」の方針と香港基本法に基づいて、香港の安定と繁栄を維持、促進することは、双方の利益になる」と記した。
「白書を支持しないという李首相の態度の現れ」と専門家は読んでいる。
*習体制は即反撃か
白書が出された4日後、副首相クラスの中国人民政治協商会議の副主席蘇栄が失脚した。蘇は江沢民派の中心メンバー曾慶紅の腹心で、江沢民が育てた吉林派の一員でもある。
この動きについて、「香港白書に対し、反撃に出た習主席が次に取り締まるのは、蘇の吉林派の盟友で港澳チームのトップ張徳江かもしれない」という見方もある。
米国在住の石蔵山氏は、「白書は江沢民派の仕業」と認識している中国専門家のひとりで、こう分析した。「習近平との戦いで劣勢に陥っている江沢民派は政権の主導権を取り戻すチャンスを狙っている。今回の白書の発表によって、習体制に対する国際社会の非難や香港市民の反抗を誘発し、香港の情勢を不安定にすることで、習体制に難題を突きつけようとしている。一方、習近平サイドはこのことをきっかけに、江沢民派の取り締まりをいっそう加速させるであろう」