米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は3月29日、米中通商協議に詳しい情報筋の話として、米側が中国当局に「インターネット安全法」の撤廃を要求したと伝えた。第8回米中通商協議は3月28、29日の日程で北京で開催された。
2017年6月から施行した同法は、「重要情報インフラの運営者」が中国国内で収集し、または発生させた個人情報や重要なデータを中国国内に保存しなければならないと規定している。また、運営者が購入するネットワーク製品やサービスが、中国国家安全保障に影響を与える場合、中国当局の安全審査を受けなければならないと定めている。
情報筋は、中国当局の「重要情報インフラの運営者」についての定義が不明確であるため、米企業は中国企業が製造するサーバーやルーターなどの設備を利用しなければならないと指摘した。これによって、中国に進出する米企業は事業運営上、多くの障害がもたらされるという。
この法律に基づいて、米アップル社は2018年初め、中国本土の顧客のiCloudアカウントで保存されたデーターを、米国のサーバーから中国国内のサーバーに移行した。このサーバーを管理する中国の雲上貴州大数据産業発展は、貴州省の国有企業だ。
台湾在住のネットワークエンジニア、周曙光氏はRFAに対して、「企業の顧客情報が中国当局、または中国当局が支援するライバル企業に流れる可能性がある。非常に不公平だ。そのため米政府は貿易交渉で、重大な議題として取り上げたのだろう」
また、WSJによると、米側はすでに中国当局に「重要情報インフラの運営者」の定義を明確化するよう求めた。中国側は、中国市場における運営者企業の市場シェアに基づき、関連法案が適応するか否かを決めていくと提案した。
中国側の交渉担当者は、米側に対して、中国のクラウド・コンピューティング市場をさらに開放する意向を示した。また、海外クラウド・コンピューティング・サービス企業の中国国内の自由貿易区におけるテスト運営を許可した。この自由貿易区は、中国のビッグデータ・センターがある貴州省貴陽市に設けられるとみられる。
しかし、中国当局が、外資企業が自由貿易区で設立したデータセンターと国外のネットワークとの接続を認めるのか、外国企業が引き続き中国国内企業と業務を提携する必要があるのかは不明だ。
在米中国人通信専門家のフランク氏(仮名)はRFAに対して、「中国当局がどのようにクラウド・コンピューティング市場を開放していくかは未知数だ」と指摘した。
「グーグルは当初、中国に進出し検索サービスを行った。しかし中国当局がグーグルに、中国の法規に従うよう要求した後、グーグルは撤退した。外国企業が中国でクラウド・サービスを行う場合、当時のグーグルのように、中国当局から国内法規の順守を強要される恐れがある」
第9回米中閣僚級通商協議のため、中国の劉鶴副首相が率いる代表団は1日、米国に到着した。フランク氏は、中国当局が「インターネット安全法」やクラウド・サービスに関して、米側に歩み寄らなければ、今後の貿易交渉は難航するとの見方を示した。
(翻訳編集・張哲)